コロナノコロ

コロナ生活から思うこと

旅行気分でスーパー銭湯に泊まる

これを書いているのは1月4日だが、いよいよまた緊急事態宣言が首都圏で出されそうだ。そうなると、どこにも出られなくなる。いまのうちというわけではないが、年末年始どこにも出ないと寂しいので、旅行気分でスーパー銭湯に泊まりに行こうと調べたら、いくつか関東にあった。オールナイトでやっているから、部屋に泊まるのではなく、リクライニングシートで朝まで仮眠するだけのことだ。それが小田原にあった。暮れには御殿場に泊まりに行ったのはホテルだから、旅になるが、今回もそこから近いところだ。
 電車賃が安いのは小田急で小田原まで行くのが少し遅いが、前にもそれで行ったことはあった。小田原は何度目か。ただ、泊まったことはない。三が日の3日の朝から出かける。ずっと天気はいい。千葉を7時過ぎに出て、小田原に着いたのが10時過ぎだ。今年の5月ころに、千葉を引っ越して、小田原に住もうとアパートを探していた。今回は、その下見みたいなこともあり、どんな町か、じっくりと見てみたい。
 まずは、駅に着いたら、地図で調べて、北口から城山公園へと歩く。そこは行ったことがない。小田原城は広い。関東随一の城であったらしい。駅前に北条早雲の馬に乗った銅像がある。いまの小田原城は近年再建したものだが、その公園よりもずっと広いのだ。競輪場の先に公園はあり、昔の土塁などが保存されている。歩いていると文学碑もあった。牧野信一文学碑と井上康文詩碑などと、民衆碑がある。そういえば、この小田原も随分と文学者たちが住んだ。湘南海岸はずっと作家たちの別邸があったりした。鎌倉には200人もの作家たちが住んだし、鵠沼、大磯もそうだ。そういう文学散歩をして歩いたことがある。
 城山公園を降りたら、お濠に出る。初詣の人たちがぞろぞろと歩いている神社は報徳二宮神社と言い、この小田原は、二宮尊徳の生まれた土地なのだ。それで、駅にも薪を担いだ小学校の校庭にあった二宮尊徳の銅像が建っていたし、この神社もまさに尊徳を祀っている神社なのだ。いまなら、推奨されない、歩き読書は危ないからやめてくださいと叱られるが、歩きスマホのご先祖様なのだ。お濠にはカモメもいた。海が近いからいてもいいが、何かおかしくないか。
 そこから御幸の浜という海に行ってみようと歩いたら、地図があり、あれ? 何か来たことがあると、小田原文学館とその隣の白秋童謡館も覚えがある。さらに、入ったことがある蕎麦屋だとか、焼き立てパン屋と隣の和菓子店も入ったなと、ようやく思い出した。8年くらい前にここを歩いて、確か、パンを買って、入口のベンチに座って食べたのだ。スマホで、そのころ書いた「古本屋のうたた寝」というブログを調べたら、なんだ、やはり、歩いている。ここに来ているのだ。海にも行っている。同じところには二度行かない鉄則があるので、パスしようとしたが、あのときは、オーストラリアからの帰りで、湘南を歩こうと、熱海に一泊し、真鶴から小田原、藤沢、江の島、鎌倉ととびとびに海辺を歩いたのだ。あのときも太っていて、いまのように歩くことで減量しようとしていた。
 海に出るところにカートが置いてあり、無人販売所なのだが、みかんを売っていた。7個で百円と積んでいる。安い。街中の半分以下だ。当然買った。それを浜辺の石に腰かけて喉も渇いたのでジュース代わりにいただく。釣り人だけが来ていた。ずっと沖合に大島と初島が見える。右手は伊豆の山々、左手は遠く江の島が見える。富士山は背中で見えない。
 街に引き返し、どこかで昼飯と探した。ういろうを売る店があった。ういろうは名古屋ではないのか。ここ小田原の名物もういろうか。どうも、あのういろうは好きになれない。
 途中に通行規制の看板があちこちにあった。見たら、大学駅伝だった。そうか、この日は3日で復路だったか、箱根から小田原へと走るのだ。忘れていた。うちの大学は連覇するだろうか。スポーツに全然興味がないから、テレビで毎年の正月定番の駅伝はあまり見ないのだ。
 城も前に見たからパスして、古そうなたたずまいの蕎麦屋に入る。建物が古いといい蕎麦屋というものでもないが、当たりだった。とろろ蕎麦御膳を頼んだら、蕎麦寿司もついてとろろ飯と二椀の蕎麦がついた。
 昼過ぎたばかりだが、もう小田原は見たので、温泉に入る。駅近くにある万葉の湯というビルひとつが上から下までスーパー銭湯なのだ。オールナイトなら料金は加算されるが、それでも4千円もしない。それで泊まって、休めるスペースがいろいろとある。正月はここでリフレッシュしようと考えた。万葉という名は、湯河原温泉は隣だが、そこを詠んだ歌がある。古来から知られた湯河原温泉というので、万葉集からとったとある。温泉は引いているものか。熱海も箱根も近いので、いくらでもお湯はありそうだ。
 部屋着で着替えすると、まずは温泉に入る。年末に稲毛のスーパー銭湯に行って、まだ一週間も経っていないが、初温泉だ。屋上に露天風呂もある。サウナに入ると、テレビ中継でちょうど大学駅伝の終盤戦。土壇場で駒澤大学が創価大学を追い抜いて優勝という、いい逆転勝利を見た。うちの大学も12位から4位まで上げて奮闘していた。
 休憩室では昼寝した。最近はいくら寝ても眠い。昨日の初夢は、自分が旅行社になった夢で、Go Toトラベルが中止になったからとキャンセルの払い戻しで忙しい夢だった。
 夜飯は食堂で大きな海老天三本が富士山のようにそそり立つ天丼をいただいたが、口に余した。目では食べられるが、実際は小食になった。その半分でよかった。
 インターネットスペースで小説を書こうとしたが、どうも書けない。みかんの残りを食べたり、お茶ばかり飲んで、また風呂に入り直したりしていた。何をしているのか。そのうちリクライニングシートでテレビで洋画を見ながら寝ていた。鼾がすごい。その合唱に起こされる。朝は朝でまだ5時というのに、あちこちからスマホのタイマーが鳴る音で目が覚めた。サラリーマンたちが簡易宿泊所にしているようで、ビジネスバッグを手に仕事に出る。4日から仕事という人も多いだろう。この温泉は朝は9時まで出ないといけない。スーパー銭湯に泊まるのはこれで二度目だが、悪くはない。予約もいらないし、気楽でいい。旅がダメなら、今度からは銭湯に行こう。近場で我慢しなくてはいけない。どうなることか緊急事態宣言の行方。またいまの仕事は自宅待機になるのやら。去年も3月4月と二か月続いた。休業手当が6割は出るから、働かなくてもいただけるだけありがたい。なんとなく、またそうなりそうなニュースだ。


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