コロナノコロ

コロナ生活から思うこと

弘前の画家工藤甲人は平塚にいた

 平塚市の美術館で、また展示品を替えたので、出かけてみた。図書館の前にあるから、近くて行きやすい。二つの企画展を同時開催している。わたしは65歳以上で平塚市民なので身分証を提示すれば無料なのだ。そこも落ち着く空間で、コロナでなくても普段からそんなに観覧客はいない。三か月とか長期開催なので、いつでも好きなときに見られる。美術館の建物は大きい。蒲鉾型の建物が二つ並べられている。中庭がまたいい。ただ、その日も雨で濡れていて、ガーデンテーブルなどで読書もしてみたいが、それができない。
 二つの企画展とは、ひとつは発達障がいの人たちの作品展だが、「パッパラパラダイス」という大掛かりなもの。平塚市だけではないだろうが、市内にスタジオクーカというアトリエがあり、そこで創作活動をしているようだ。一度前を通ったことがある。わたしの息子たちと同じ年の若者が多いが、みんな特異な才能で平面と立体を描き造る。見ていてすごいなとその色と形の使い方にため息が出る。わたしの知り合いの娘さんも二十歳は過ぎていたが、家にずっといた。生まれつきの障がいを持っているが、彼女の絵を見て驚いた。そっちのほうで才能を伸ばしたらいいのにとお父さんに話したことがある。
 その展覧会を見てから、隣のスペースでは、美術館開館30周年記念の「The gift」というタイトルで、平塚市に寄贈された作品選と新収蔵品展をやられていた。そこには思わぬ絵画が展示されていた。市としては鳥海青児の作品を集めているというが、調べたら平塚市の出身画家なのだ。その外に、わたしの好きな大島哲以や恩地孝四郎、野見山暁治の作品が目立つ。その中で目を引いたのが、田澤茂の作品があったことだ。どうしてこんなところにと思う。青森県は田舎館村出身の津軽の画家なのだ。その略歴を調べたら、7年前に亡くなられたが、ここ湘南で暮らしたようだ。青森の画家がいたということも嬉しい。それより、入口にでんと大作が展示されていたのが、なんと弘前出身の工藤甲人の絵なのだ。「蝶の階段」というアブストラクトの絵なのだが、青森の七戸の鷹山宇一が描いた蝶の幻想的なモチーフとはまた違った画風だ。
 その絵は工藤甲人がどういう経緯か、横浜ゴムの会社が所有していたのを美術館を作るというので寄贈した作品とある。それで初めて、弘前を出てから、東京芸大の教授を退職されて、晩年は平塚市に住んでいたことを知る。ちょうど10年前に95歳で亡くなられたとある。青森では馴染みがあり、展覧会の図録もよくうちの古本屋には入ってきたし、いろんな地元の美術館では作品を見てきた。青森県ゆかりの画家が二人もこの辺りで暮らしていたとは、なんとなく同郷のよしみで嬉しくなる。


 美術館も図書館もまだ閉鎖になってはいない。これからはどうなるか判らないから、いまのうちに見ておきたい。


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