コロナノコロ

コロナ生活から思うこと

それでも図書館へ行くのか

 大雨注意報が出ていた。ところによっては警報。全国的に居座る前線が雨を毎日降らせている。よく、そんなに雲の貯水槽に水があるものだ。九州などでは二日間で千ミリ近いというと、1メートルの雨が降ったということだ。それはすごい。まるで、空が壊れたかのようだ。水漏れなんていうものしゃない。空のダムの決壊だ。
 平塚市でもその朝だけでも100ミリの雨が降ったというから、どうもミリというと実感がない。10センチと言うと、これはすごいとなる。そんな日曜だが、それでも明日の月曜日は図書館が休みだから、どうしても、今日中に本を返して借りにゆかなくてはいけない。不要不急の外出はお控えくださいと呼びかけていたが、それは今度はコロナではなく大雨なのだ。
 大きな傘を持ってゆこう。小さい傘ばかりがいまは売られているが、あれは流行りでも役に立たない。マンションを出ただけで、待っていましたとばかり、どどどと音が鳴るほどの大雨。歩道はすでに水溜まり。おっと、これではスニーカーでは濡れるなと。家にあるゴム長を履いてこようかと思ったが、まあ近くだからとそのまま出る。ゴム長と言っても解らない人もいる。ゴムの長靴のことだ。青森ではみんなそう呼んでいる。雪国だから、冬はゴム長。その製造工場も青森市にはあるくらいだ。
 一直線の市役所の建物が遠くに見えるいちょう並木通りを歩く。ずっと人影がない。日曜だから車も人も出てもいいのだが、車もあまり走っていないし、歩道を何百メートルもの間、歩いているのはわたし一人だ。横の通りを見ても、誰一人として外に出ている者はいない。いままでこんな雨も人間のいない町も見たことはない。
 近くのセブンには車が何台か止まってはいた。横浜ゴムの工場は休み。郵便局の前を通ると、ようやく郵便を日曜でも開いている窓口に出しに車で来た人と会う。おお、人間だ。人間がいた。思わず嬉しくなる。
 わしの背中のバッグはもう傘もきかないほど濡れている。本が濡れたら困る。いまの使っているバッグは完全防水ではなく、撥水でもない。濡れて困るものはさらにビニール袋に入れてから仕舞う。車道は川のように雨水が流れている。歩道もそれに近い。それでも歩道には傾斜がついているから、建物の近くを歩けば、まだ水溜まりではない。スニーカーは古いので裏側がすり減っていて、滑る。タイルのところは注意してそろそろと歩いた。こけたらおふくろのように顔に青タンができる。おふくろも先週、施設の部屋で転んで、顔面を打った。その画像を妹が送ってきた。目の下が紫に腫れている。これはすっかりとお岩さんで夏向きだ。たまにその画像を眺めてはぞっとして、暑さを忘れている。
 図書館までの道のりで自転車は当然走っていないし、歩いている人と出会ったのは一人だけ。まるで、この街から、人間だけが消えたか、全員が避難して、何も知らないわたしだけが生存者として取り残されていたかというようなものだ。
 横殴りの雨とはいう。傘なんかしていても、風も強い。靴はぐしょぐしょで気持ちが悪い。こんなことなら、スニーカーに洗剤をつけてこればよかった。ついでに靴の洗濯ができたのに。
 命がけで図書館に、どうしてこんな目に遭いながらも来なくてはならないのだ。それは根性以外のなにものでもない。ようやく半分ずぶ濡れ状態で、なんとか図書館の玄関に逃げ込めた。図書館の入口の本棚四本には、除籍本がたまに並べて置かれている。どうぞご自由にお持ちくださいと。それがその日はどっさりとあった。ないときはゼロのときが多いが、その日はなんと嬉しい。シールが貼ってあるから転売するなどせこいことはできないが、読みたい本がいっぱいある。どちらかというと動物学と植物、医学もあるが理系だ。それでも専門書ではなく、割合と一般的な本なので、20冊くらいリュックに詰めた。エコバッグにも入る。単行本ばかりでもないが、大きな図鑑はパスした。
 二階の図書館に行ったら、なんと、客がゼロ。こんなときは見たことがない。この悪天候でも図書館に来る変わり者の顔を見てみたいと、自分で鏡に映してみる。本とDVDとCDを返して、合計で15点また借りる。本は文庫本の棚が人文科学まで行く。
 それからいつもなら奪い合いの新聞閲覧コーナーだが、誰もいないので、貸し切りだ。中央紙四紙と、今月の分の束をどっさりと出して椅子と机に向かう。それから新刊コーナーで入ったばかりの本を何冊か読む。いつもの流れで図書館には二時間くらいいる。
 前からだが、仕事を辞めてからは特に頻繁に図書館通いになる。一週間に一度だったのが、いまでは二日おきだ。電車の通勤で読んでいたときは、往復の読書時間は限られていたが、いまではいくらでもある。24時間寝ないで本を読んでいてもいい。音楽CDも気に入ったのはどんどんとmicroCDカードに録音していた。東京、千葉とどこに引っ越してもそれはしていたから、随分とライブラリーも増えた。毎日一枚ずつ録音しても年にアルバムが365枚録音される。ところで、それはいつ聴くのだ?
 午後になると雨足が衰えた。各地で被害が出ている。地球は壊れている。われわれが壊したらしい。テレビのニュースで、去年も水害に遭ったという男性がインタビューされていた。来年もまたあるだろう。これからは毎年あると思わないと。日本も東南アジアと同じ、半年は雨季になったのかもしれない。

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