コロナノコロ

コロナ生活から思うこと

手元が狂う

最近、年のせいか、手元が狂う。ぽろりと落とす。それはよく言われる脳梗塞で指先が動かないというのではなく、子供に還ったように、注意力が足りない。子供もよく零したりする。親に注意される。年寄りも次第に子供に戻ってゆくのか、うちの親父もよくやっていた。それがこのごろは頻繁で、自分でも情けなくなる。
 先日は、学校の教室の天井蛍光灯の交換をしていて、脚立に登り、蛍光灯を外していたら、ぽろりと落ちてガラスが粉々に割れた。子供らが休みの日曜だったので、全館の照明点検をして、切れた個所の交換をしていた。机をどけて、掃除をする。余計な仕事を増やした。自己嫌悪に陥る。
 飯を食っていても、シチューをまがす。(津軽弁で零すこと)床のセンターラグを拭いて、バカなことをしてと、自分で自分の手を叩く。最近はとみに多くなった。職場の仲間に聴いたら、やはり同じようなことをやっている。そうか、年のせいなのか。ただ、そういう不注意や注意力散漫ではすまされない、重大なミスに関わるようなことが起これば、ごめんなさいでは済まされない。忘れっぽくなるのも年のせいと言っていられない。
 仕事の上では、決まり事がある。夜に施錠したら警戒をセットして、センサーのスイッチをオンにすると、本部に時刻を連絡してから寝るなら寝てもいいし、シャワーを浴びてもいいということになっているが、それをうっかりと忘れる。夜中に本部から電話が来たり、眠っていたら、朝方、お叱りの電話がくる。それは何もなければいいが、突然、心臓発作で死ぬことがあったり、暴漢に襲われたり、事故があったりして連絡がないと、生存確認としての報告なのだ。巡回途中に階段から落ちて、頭を強打、死んでいても判らない。そのための随時報告があるので、じいさんたちばかりが働いていると心配にはなる。
 わたしも何度か電話報告を忘れて叱られたことがある。したと思い込んで、連絡をしていなかった、思い込みがある。だんだんと、年と共に衰えてくるのが、記憶力であり認識力など。手元が狂うのはまだかわいいものだ。そんなことは重大なミスにはならない。掃除すれば済むことだ。


 先日は、グランドマスターキーというすべての鍵が開くという、一番オールマイティの鍵をわたしが折った。前々から、少し曲がっていたりして、仲間たちと、みんなで気をつけようねと話していたときだった。たまたま、わたしの勤務のときに、それが起こった。夜に懐中電灯を点けて、各教室の点検で歩いていたとき、先生や職員さんたちもみんな帰った後だった。理科室のドアを施錠しようとして、マスターキーを差し込んで回したら、根元からぽきりと鍵が折れた。あーあ、やっちゃった。鍵穴に差し込まれたまま、綺麗に折れたもので、ドライバーとヤットコでも取り出せなかった。大変なことをしたと、青くなり、本部に連絡、課長が飛んできた。二人でいろいろとやってみたが、鍵穴にすっぽりと入ったまま、折れた相手が出てこない。マスターキーは校長先生と事務も持っているが、みんな帰った後で、それでもそれぞれの鍵があるので、閉めたり開けたりすることはできる。始末書かと思いきや、先輩にも電話したら、五年前にも同じことがあって、何度か過去にはあったようだ。金属疲労で折れた。毎日朝晩と、何百回もあちこちの鍵を開けたり閉めたりと365日しているから、そのうち折れる。本部で写真を撮りにきて、わたしに時系列で報告書を書いてくれというので、何度何分、これこれしかじかの理由でと、書いて提出した。
 仲間たちは、自分でなくてよかったという顔。これはロシアンルーレットかよとわたし。先輩は、強く力を入れて回すからだよと、わたしの責任にしたがる。それでもまだ命に関わることでないからいい。
 仕事だけでなく、外を歩いていて、足先を段差に引っ掛けて転倒というのも最近は一年に何度かある。そのために、シニア用のスニーカーは、靴の先がカールしていて、少し上を向いているので、引っかからないようにできているのを買う。足も自分の思い通りに上がっていないのだ。それも年のせいだ。意識的に歩くときは、足を上げるようにして歩いている。障害物を跳び越すときも、若いときのように、華麗に飛ぶことはできなくなっている。華麗も加齢になる。足が引っかかって、転ぶ無様なことで、すりむいたり、怪我をしたりする。同僚のじいさんは腕をそれで骨折して、病院通い。二か月してようやくギブスと包帯が取れた。
 天井の高い蛍光灯交換は無理をしないようにしている。脚立の上には立てない。ぎりぎりのところでも怖い。倒れたら打ちどころが悪かったら労災で入院となる。設備のメンテナンスに任せることにしている。
 芝刈りは先月、業者が持ってきた新兵器のAIロボットの芝刈り機を導入した。何も操作しなくても、お利巧で、芝を夜中でも刈って、終わればステーションという犬小屋みたいなところに入っている。掃除機のルンバみたいなもので、人手がいらなくなるのは助かる。ついで、掃除の全自動ロボットもできないか。警備ロボットはもう活躍している。そのうち、われわれ年寄りの仕事はみんなAIロボットがやってくれるだろう。それまではシニアも頑張らなくては。

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