コロナノコロ

コロナ生活から思うこと

青地巡礼 4 京都洛西

 昨日も歩いた。20キロ以上はあったが、さほど疲れてはいない。体をジムで鍛えるようになってからは、元気になったような気がする。三日目の最終日は、栂尾高山寺と高雄神護寺にしていた。そこも二度ほど歩いたが、やはり若いときで、ただバスで行って帰るのではなく、清滝川に沿ってハイキングコースを嵯峨野・嵐山まで歩いてくるという7キロほどのたいしたことはないが、そこがよかったので、秋と冬に来ていた。桂川の上流か、降りてくると確か化野念仏寺のところに出たような気がした。
 どこからバスに乗るのか判らないときは、京都駅に出たらいい。そこからなら大抵のバスが出ている。京都に来て、エスカレーターは東京と同じ左側に立つ。大阪は右側に立つのは知っていた。東京の逆なのだ。それがそんなに離れていない京都は東京と同じなら、その境界線はどこにあるのか。山崎あたりだろうか。天下分け目の山崎というくらいだから。くだらないことを考えていた。
 京都駅には前に折りたたみの電動アシスト自転車を青森から持ってきて、京都をそれで走ろうとした。重さは9キロと軽いので、新幹線の手荷物でよかった。ところが、組み立てたら動かない。どこかギアが絡んだようで、全然モーターが動かず、自転車としても走らないので、頭にきて、コンビニから折りたたんだまま、宅配便で青森に送り返したことがあった。8年前のことだ。ネットで買った海外の安物で失敗した。
 バスにはおばさんというより、おばあちゃんのハイカーばかりだった。どこの寺に行ってもわたしと同じくらいのご婦人ばかりで、じいさんたちはどこにいるのか。海外旅行でも女の子ばかりが目につき、男の子はあまりいない。そのまま年とっても比率は似たようなもので、女性は旅好きなのだ。世の男性は一体全体何をしているのか。
 1時間くらいで栂尾に着いた。そこから歩き始める。三日間ともに天気はよく、寒くもない。ただ、どこに行っても紅葉は十日遅かった。みんな口々にそう言っている。そればかりは予想がつかない。旅はひと月前から予約していて、わたしが行った若いときは紅葉がすごかったので、同じ時期にしたのだ。高山寺も三度目だが、そこには国宝の有名な鳥獣戯画がある。それを見るだけで700円別に取られた。小さな庵のような庭はよかった。全体にまとまりのない寺だが、裏のほうは工事中のように殺風景だった。
 そこから高雄のほうへと歩いて神護寺に向かう。石段がきつい。ふうふう言って登る。山門は改装中でがっかり。その石段のところで、19歳のときに一人旅の女の子とすれ違った。何か言いたそうにしていたのを無視して寺に登っていったが、わたしも晩生で、互いに一人旅ならいいチャンスだったのにと、いまならそう思う。だけど、このたびは、ばあさんの一人旅はいたが、こっちもじいさんの一人旅だ。何か小説にもならない。
 清滝川は青く澄んでいる川でとてもきれいだ。両側は柱状節理のような険しい岩がそそり立つ崖になっている。崖崩れ注意とあるが、ところどころ倒木が遊歩道に覆いかぶさってきて、嵐山が洪水になった大雨のときの被害がそのままになっているようだ。その大木の下を潜って通る。大丈夫か。1時間歩いても、誰ともすれ違わない。わたし一人より歩いていないのだ。こんなところに熊は出ないだろうな、もし出たら、じっと目を見て後じさりするのだったか。するとなんとトイレルランニングのおばさん二人が山道を走ってくるではないか。よかった、人だと安心したが、こっちがふうふう言って歩いているときに、走っているパワーには見とれた。
 ようやく民家と車が見えて、里に出た。バカなわたしは駐車場管理している男性に、清滝はどこにあるんですかと聞いていた。すると、憮然として、清滝という滝はない、ここの地名だと、言われて、すみません。
 長いトンネルがあった。それを歩いて抜ける。出たところに愛宕念仏寺があった。観光タクシーで来ているご一行が、これはいい写真が撮れた。年賀状にしようと話していたので、わたしも寄ってみた。境内には1200体の石仏が斜面から参道まで、どこでも置かれていた。顔もいろいろユーモラスに笑っていたり惚けていたり、それは庶民が掘って安置したものばかりのようだ。苔むして、古いものばかりだが、裏に掘った人の名前も刻まれているところは、近年のものもありそうだ。そこが行っていない寺なのでよかった。いい写真が撮れた。
 渓流はいつしかなくなり、道なりに降りてゆくと、化野念仏寺や嵯峨野と、いままで何度も来ているのでパスして歩く。観光客はほとんどいない。店は閉めていたり、売り店舗というのも目立つ。不景気がさらに倍加して、かつてはここも中国人観光客でひしめきあっていたとは思えない。コロナでかなりの打撃だったろう。人力車もお休み。どこかで昼飯と思ったが、やっているところが少ない。嵐山まで出たらありそうだが、嵐山はパスして、JRの駅方面に歩いた。すると、駅近くに発酵食堂カモシカというお店があり、何か変わっているので入って、なにやら怪しい丼定食を頼んだ。客はわたし一人だけ。カウンターの上には保存ビンがずらりと並び、理科の実験室のようだ。出てきたのが、納豆と昆布を刻んで、それに麹を入れて発酵させたもの。まさに、青森のしょゆのみという郷土料理に似ているが、味は甘いのは、熊本にもあるしょうゆのみに近い。熊本のはそれに蜂蜜を入れてさらに甘くしていた保存食だ。どうですかと聞かれたので、青森にも似た料理がありますと、お姉さんと健康食品の話になる。わたしも好きだから。かりんのジュースもいただく。ヘタな店で食べるよりは、こういう珍しいものがいい。
 そこまで来てもまだ昼の1時だった。時間が余る。これからどこに行こうか。予定よりも早く嵐山へと来てしまった。飛行機は夜の8時過ぎに出る便だから、それまでどこかで時間を潰さないと。



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