コロナノコロ

コロナ生活から思うこと

果実と野菜

 野菜が安くなってきたから嬉しい。いままでは天候不順と日照不足、長雨と、この夏から秋へと、野菜が高騰していて、買えなかったが、ようやく買える値段になってきた。たまに買い物で違うルートで帰るのだが、九段の病院検診があったので、そこから地下鉄東西線で千葉の西船橋まで行くので、終点まで行った。いつもそこの駅前の新鮮市場に買い物に寄る。駅前には二つのスーパーがある。どちらも行ってお得なものだけ買うようにしている。東京から千葉に入ると物価が全然違う。同じスーパーのチェーンでも土地によって価格が違うのは、流通なのだろう。
 この日は、店頭に積んでいる野菜から、買った。小松菜が16円。ラディッシュが束で15円。白菜が半分で50円。大根1本50円、ミズナが15円と、きっとこの価格は青森の前にわたしがよく行ったスーパー藤原よりも安いに違いない。続いて、きゅうり7本で150円。キャベツ1玉で50円と、みんな買いたいが、冷蔵庫に入らないし、買ったら使わないといけない。脅迫されるようにいつも冷蔵庫の野菜を見て、苦悩するなら買わないほうがいい。サラダばかりで飽きた。この前はおふくろが妹に頼んで、フジの立派なりんごを箱で千葉に送らせたのがあるのだが、それでも店頭にわたしの好きなときの黄色いりんごが5個で300円で売られているのをつい買ってしまう。フジは日持ちがするので、置いておいてもいいし、まだ硬い。ときは柔らかいので早く食べないといけないが、大きいのが一個50円は安い。それは毎日一個ずつ食べている。皮ままがぶりとかぶりつく。芯まで食べて丸ごとだ。野菜でも果実でも丸ごとがいいらしい。魚もそうだと聞いた。丸呑みがいいのだ。蛇のように、全部飲み込むといいようだが、喉がつかえる。
 サラダもドレッシングで味が変わるから、出来合いのも買うが、香辛料を変えて、りんご酢とオリーブオイルとでいろんな新しい組み合わせに挑戦すれば、飽きないかもしれない。
 それと、漬物だ。ビンに入ったピクルスを買ってくると、食べた後の二番煎じで、漬け汁を捨てないで、それに玉ねぎやニンジン、大根、セロリなどを切ってまた漬け込む。それと、キムチも容器に入ったものを食べてしまうと、少し残して、それを二番煎じと白菜や大根を切って入れて、味は少し薄くなるが、もう一回は食べられる。
 冬の寒さではないが、なんとなくセーターを出してきてエアコンの暖房を入れる季節になると、急に食べたくなったのが秋田や津軽でやっている大根のなた漬けとか、がんくら漬けといった、ザク切りにした大根を麹と、ところによっては、鰊や鮭の身を入れたりして漬け込む漬物だ。昔は大きな樽で、いまごろ雪が降るころに、家庭でみんな漬けたものだ。わが家でも漬けた。先のスーパー藤原では、その時期になると、大根や白菜を店頭で束で売る。白菜など丸ごとひとつでも多いのだが、それを荒縄で縛って、五つとか、そういう単位で売るのだ。冬に冷たい樽に手を入れるのは嫌だが、がんくら漬けはシャキシャキとして生っぽくて美味しい。がんくらとは津軽弁で丸くなく、形がいびつなという意味で、ナタでザク切りにして漬けた豪快な漬物だ。ひとつが大きい。輪切りにした薄いおしんこというものと比べたら、その何倍もあるのと、形ががんくらで粗野な漬物だ。わが家では魚は入れない。生臭いとおふくろも嫌う。その味を思い出して、さっそく真似てみる。塩麹とたかのつめだけで、ビニール袋に入れて揉みもみして、いま冷蔵庫の中で美味しくなっているだろう。1本50円の大根だから、惜しげもなく使える。漬物なんかも、できあいを買えば高い。自分で一夜漬けなどキャベツときゅうりでいくらでもできるし、安上りだ。ただ、一人なので、朝昼晩と、漬物ばかり食べないといけなくなる。今度は漬物に脅迫される毎日が続く。


 果実も高いが、ヘタレる寸前のものが特価台で半額以下で売られるのを買ってくる。先日はドンキホーテのある店に行ったら、なんと、皮が少しだけ黒くなった完熟バナナが4本で10円だった。それをガバガバと買ってきて、中身をラップでくるんで冷凍しておく。自然のバナナアイスができる。栄養成分が冷凍することで、よくなるのだとか。変なアイスを買うよりは体にいい。一本たったの2円50銭だ。それがわが家の冷凍庫にごろごろと入っているが、毎日2本ずつ食べている。バナナはカリウムで頭にいい。本当は相方と暮らしていたときは、精神科の医師の書いた本にバナナを食べさせろと書いてあったので、それから毎日のように食べさせて、相方は、不思議に思い、バナナが好きなのねとよく言われた。わたしが好きなのではなく、相方の病のためだった。
 家庭菜園のブロッコリースプラウトとかいわれは、ようやく終わった。テーブルの上で、ダイソーで二つで百円で買ってきた種だが、四回分ずつあった。育てる楽しみもあったが、二週間かけて伸びてきたのを一瞬のひと口で食べてしまう。水耕栽培もいまは流行っているが、それも手間を考えたらスーパーで買ったほうが安いだろう。
街中を歩いていると、空き店舗前とか駐車場とかを利用して、ゲリラ八百屋が出没する。わたしはそういうのを覗くのが好きで、出ていたら、どれどれと、いつもの口癖で寄ってゆく。先日は、通勤路途中の踏切のところにあるカフェの前に八百屋がスポット販売していた。たまたま京成電車で踏切は降りていたので、売られている野菜を見たら、どれも珍しい、スーパーでは滅多にお目にかかれないものばかり。その中で、京野菜のえびいもがあったので、買い求めた。小さいのが200円。どうして食べるのかとおばさんに聴いたが、ネットで調べたらいい。井上靖のエッセイにあった。若いとき読んだ本の内容を忘れていない。井上靖は京都でも暮らした。そのときの思い入れがあって、えびいもを求める。それは後で煮たら、少し硬め。さほど美味しいとは思わなかった。サトイモを長くして硬くしたような。それとはやとうりというのが売られていた。黄色いひょうたん型の瓜だろう。味はどうなのか。四つで200円とあるが、その隣の青パパイヤにした。相方から栄養があって、美容と健康にいいと聞いていた。それはサラダときんぴらにしたが、どちらも硬い。味もあまりなく、一度買ったらいいかというようなもの。食べたことのない野菜や果実には興味がある。なんでも一度は食べてみたい。


 まるで果実と野菜が主食になったようで、わたしはいつから草食動物になったのかと思う。性格は肉食系なのだが、ダイエットのために馬のように草ばかり食べているから、皿ではなく、飼い葉桶を買ってこなくては。

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