コロナノコロ

コロナ生活から思うこと

悲鳴

 相方はだいぶ参っていた。精神的限界で、わたしに電話をしてくる。助けを求めているのだが、無視はできない。それで、夜遅くスマホを止められているので、非通知の電話が来た。公衆電話からかけてきているのだ。いまから会えないかというのだが、夜も遅いし、台風の影響で雨が降っている。また可哀想に思えてくる。それで、翌日の昼にランチでも食べようかと、わたしは休みなので、約束をいれた。大丈夫か、どうにかなっても大変だ。電話は途中で何度も切れる。スマホが相手だと電話料金がかかる。10円玉を入れて、何秒話せるのだろうか。硬貨は落ちてゆく。タイムリミットで切れる。泣いているので、またかとは思うが、どうにかしてやりたくなる。
 翌日も一日雨だった。台風は千葉沖からそれていた。それでも雨風はある。明後日に伊豆の温泉に二泊旅行に出るので、冷蔵庫の中のもので悪くなるものはみんな持ってきて、旅行の準備もしてきた。どうせ千葉には帰れそうにないから。
 地下鉄の中で電話がくる。もう待ち合わせ場所の九段のマックに来ていると。早いな。その間も相方の娘とメッセンジャーで今後のことを相談していた。ここのところ、仕事も辞めて、生活にも貧窮しているようだから、何かと娘と連絡を取り合って、どうするか話していた。トキオの元メンバーがアル中であったが、それで事故を起こしたニュースがあったばかりだから、そっちの検査をしてみないかと説得する作戦だったが、たぶん、頑固に拒絶するだろう。ならば、コロナで健康診断を勧めて病院に連れてゆくとか、そういう騙して連れてゆく方法はどうかとやりとりしていた。ともかく、もう、千代田区にはいたくないというので、マンションの更新はなく、10月末で退去すると、管理会社にはこの朝に連絡した。期日はひと月後で10月24日までとなる。保険料と管理料、更新料と払わなくてもよくなる。どうせ、どうなっても相方の荷物はうちの千葉のマンションに運んで保管することにしたので、いまがいいチャンスだった。家賃の高く狭いマンションにいるよりは、家賃の安く広い千葉なら一時的に緊急避難はできる。
 マックでアイスコーヒーを飲みながら、相方と今後のことを話し合う。そろそろ潮時かと引っ越しのことは了承した。荷物はレンタカーで千葉に運ぶ。それも了解した。病院のことはその後だ。いまはコロナで病院も保健所も大変だろう。千代田区の保健所に娘と相談に行ったのが2月末であったが、それからコロナがひどくなり、相方と保健婦さんとの面会は長引いた。タイミングは悪すぎた。何か、わたしの筋書き通りに物事は運んでいる。いまの都心のマンションはわたしの契約なので、早く出したかった。
 明後日から伊豆に旅行に行くが、気分転換に行くかと言ったら、行くようなことを言うので、伊東と熱川の温泉宿に電話をしてみた。部屋は入れるというが、わたしの場合は千葉からだからGo Toトラベルで安くなったが、相方は都内だから10月1日以降でないと安くはならない。それでもたいしたことがないので、連れてゆくことにした。温泉旅行なんか、3年前の草津一泊以来だ。後は旅行らしい旅行はしていなかった。
 スマホも止められて使えないので、わたしの二台のうち一台を貸した。見られては困るメッセンジャーなどはアンインストールした。娘からのメッセージが同時に二台に入るので、片方を削除したのだ。それが甘かった。後で大変なことになる。
 昼飯にまた近くのジョナサンにした。そこも何回目か。平日なのでサラリーマンもだいぶ来ていた。酒は頼まないで、セットメニューにドリンクバーだけにする。それで長くいられる。だいぶ、気分は落ち着いたようで、相方はいい顔をしている。一人で外敵と戦い、これから司法書士の不正をただす裁判もやるというので、追い詰められていたのだ。わたしのことを東北の男は強い、特にわたしが強い人と持ち上げる。どんなに気負いがあっても、女は弱いものだ。誰かが傍にいないといけない。だけど精神的病はなんとかしなければ。別れたのではなく、離れたのだが、今後どうなってゆくのか、娘と密かに連絡を取り合って、決めてゆこうと思う。


 またマンションに行ってみたが、食材を買っていないのか、いつもなら晩飯のおかずを作るのに、材料がないようだ。それで、わたしが冷蔵庫からジプロックに入れてきたおかずを二人していただく。何かまた千石に一人でいたときのようになっていた。あのときは、冷蔵庫は空で、仕事にも行かず、引きこもって、腹をすかせていたのだ。
 翌朝は雨で、そこから出勤した。明日は表参道の地下鉄駅のホームで待ち合わせた。久しぶりの温泉旅行で、少しは気分は治るだろうか。
 仕事が終わり、職場で仮眠しようと、布団に入ったときだ。相方から怒って電話が来た。またブログを書いているでしょうと。ヤバイ、貸したスマホは消すものは消したが、ヤフーメールはそのままだった。いつもヤフーメールからブログのサイトにアップしていた。そのメールを削除したらゴミ箱に入るが、ゴミ箱の中までは覗かないだろうと安易に思っていたら、相方はそういうところまでチェックするやつなのだ。浮気をしても絶対にバレるのは、変なところで頭がよく、神経を使っている。もう、あなたとは暮らせない。あれほど書かないでと言ったのに。それだから、ペンネームを変えて、別のサイトから親しい人だけに教えていたのが、とうとう見つかってしまった。書いている内容を外敵が見て、それで追跡されるというのだ。何を恐れているのか、行動まで教えたくないのだ。それは政治家や芸能人ならいざ知らず、無名の一般人が心配することではないが、妄想がそうさせる。スマホは貸すのではなかった。
 翌朝、仕事明けで、地下鉄駅で待っていたが、案の定、相方は来なかった。電話を入れたら、やはり、あのことで、旅行には行けないと言ってきた。わかった、もう会わないようにしよう。だから、頼らないでもらいたい。この先、どうなるのか。いまのマンションは出ることを管理会社に話していた。居座られても困る。娘にメールして、来月の20日くらいまでママを入院させないと、行くところがないと。どこにも居場所はなかった。新しく借りる金もなければ、娘も同居を拒んでいる。わたしも一緒には暮らせないから離れている。出されたら、ホームレスよりない。荷物はどうするのか。後ひと月もないのだ。それまでどうするか、正念場を迎えていた。

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