コロナノコロ

コロナ生活から思うこと

海と読書と音楽と

天気がよければ、自転車で、15分で行くいなげの浜か検見川の浜に行く。幕張の浜と繋げたら、何キロもある長い日本で最初の人工の砂浜が続いている。その隣接する海浜公園もいい。ここのところは温かい。シャンバーはいらない。休みの日は昼前から出かけた。昼飯も買ってゆこうと、途中の小さなスーパーに寄ってゆく。ドリンクはボトルに入れて持ってきた。平日なので、稲毛海浜公園は人の出が少ない。わたしのような用のないじじばばばかりだ。近くの人なのだろう、散歩に来ていて、屋根のあるテラスの椅子に座っている。わたしもそこに陣取る。ぼんやりと海を眺める。世の中がコロナの第3波で、急激に感染者が増えている異常な事態になっているとは思いもしない。秋になると、さすがウインドサーファーたちはいない。
 きらきらと昼の太陽が波がしらを宝石のように煌めかせていた。潮風がここちよい。打ち寄せる波を見ているだけで癒される。
 バッグからスマホとイヤホンを出して、何か音楽を聴こう。FMラジオはいいのがなかったので、スマホの外部ストレージに保存していた音楽を聴いた。だいぶ前に青森にいたときに、気に入った曲や歌をyouyubeで検索したら出てきたので、ダウンロードして保存していたのだ。映画音楽があった。「赤いテント」の「ワレリヤの恋」、「鉄道員」のサウンドトラック、フランスシレイの「愛と死と」ベースが聴いているテーマ音楽。シリアスな映画もよかった。ビートルズの「Because」これはわたしが好きなビートルズの傑作と思う。ミッシェル・ルグランの「おもいでの夏」少年と人妻のセックスがせっなかった。山崎ハコが絶唱する「白い花」なんかも入っている。グレープの「縁切寺」など、若いときに聴いた歌が続く。それが、目の前の煌めく海と合う。青春の歌で引き戻される。鎌倉もよく通った。幼馴染が国大の雪の下の寮にいたので、わたしは東京からよく通った。由比ガ浜の砂浜に二人して座っていたときを思い出した。


 昼飯をほおばりながら、持参した文庫本を読む。手あたり次第で、書架の端から順番に攻めているので、読んだことのある本も再読する。その中で、自分の思い出と重なるシーンが出てくると、場面が生き生きと蘇ってくる。足立倫行の『一九七〇年の漂泊』早稲田を中退して世界放浪の旅に出た著者は、年恰好はわたしよりいくつか上だが、沢木耕太郎に近い。学生運動で揺れるキャンパスに見切りをつけて、貴重な青春時代をわたしも放浪してみたかった。スペインの南端、アルヘシラスとタリファに逗留している。ジブラルタル海峡に面した港町にわたしも泊まった。カディスにもいたとある。懐かしい港の風景に癒されたとある。彼も海が好きなのだ。
 河合武郎『ルソンの砲弾 第八師団玉砕戦記』はフィリピンのルソン島で最後まで生き残った兵士の記録なのだが、南国の島だけでなく、フィリピンも激戦で、多くの戦死者を出した。東北から来た兵隊が多かったとある。青森からもだいぶ行っていた。弘前にあった野砲兵団のこれは実録なのだ。ルソンで追い詰められ全滅する郷土の兵隊たちの最後が書かれていて悲惨だった。その場所がパタンガスやリパというわたしにとっては、ルソンを旅したとき、それとは知らず、ダイビングスポットをネットで見て、潜りに行ったのだ。パタンガスでは迷ったし、リパのフェルナンド空軍基地前のホテルに2泊した。まさか、そこがリパの高地で激戦地であったとは知らなかった。米軍はパタンガスから上陸してきて日本軍を壊滅させた。そんな血に塗られた戦地で泳ごうとしていたのだ。


 『漱石日記』の抄は再読か。若いときに読んだ本と、老年になってから読むのとでは、捉え方が違う。漱石の赤裸々な私生活が覗ける。ロンドンに赴いたときは、船でシンガポールとペナンにも寄っている。われわれが旅した3年前のルートを思い返していた。明治のころとは風景は違うが、一度、スエズ運河からヨーロッパに入る昔の人の旅路を辿ってみたいものだ。
 漱石の夫人に対する妄想と下女に対する観察は、やはり精神的病気だと思わざるをえない。漱石の周辺の小宮豊隆は、漱石を擁護したらしいが、漱石の次男伸六は母鏡子を弁明する。身内のほうが父親の本当の姿を証言しているのではないか。外の顔と内の顔もある。それが、日記には如実に出ている。


 本も旅に出る。紀行が好きなのだが、それだけでなく、小説の舞台に行ったこのある町が出てきたら、引き込まれるようにして読んでいる。行ってから読むか、読んでから行くか、それはどっちでもよさそうだ。わたしは、海外旅行の前に、行く国に関する本を図書館で借りてきて、ガイドブッグだけでなく、文学も含めて基礎知識をつけてから行く。そうでなければ、後で帰ってきてから、見てこなかったことに後悔やみするからだ。
 いなげの浜は日が暮れるのが早くなると、4時過ぎたら夕焼けだ。その夕景を見てから買い物して帰ろう。天気がよくても雲もあったほうがいい。夕焼けのパノラマがすごい。明日も晴れるだろうかと、引き返す。


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