コロナノコロ

コロナ生活から思うこと

君は子供のように動物園ではしゃぐ

相方はまだ次の仕事に就いていなかった。千代田区の指定された駆け込みマンションで生活して半月が経っていた。東大病院の検査も今度は二回目になる。何か、いい方向に向かっている。
 そんな中、置き忘れた冷蔵庫の刺身を取りに行くというので、せっかくまた来るならと、千葉市の動物公園に行こうかと誘う。わたしも休みで暇だから、天気もいいし、暖かいので、行ったことのない動物園に行ってみることにした。
 相方と稲毛駅で待ち合わせる。その前に図書館に行って本を返して借りてくる。行方不明の一冊の文庫本は、やはり図書館で返却漏れで、職員さんに謝られた。なんでも利用者のせいにしてはいけない。
 相方の住んでいるのが千葉寄りなので来やすいのだ。家賃と光熱費は只だから、食費だけあればいい。それはわたしが貸した。都営のバスと地下鉄が只のパスをもらっているので、交通費もあまりかからない。それで、あちこちに買い物に行っていると言った。
 ネットで調べて、千葉公園というところに行ってみたいと、相方が言うので、千葉駅から歩いてすぐの千葉公園に連れてゆく。わたしは三回目だ。池と高台もあり、いまは紅葉は少し早く、花は咲いていないが、のんびりとできるところだ。日露戦争のときの陸軍の演習場や陸軍病院などがあったところを公園にした。そういう百年以上も前のコンクリート製の軍事施設の遺物が残されている。ベンチに座り、ぽかぽかの陽気で眠くなりそうだ。こうして相方とたまに会って様子を見るのがいい。互いに気にはなるのだが、一緒にいると喧嘩になるから、距離を置いたほうがうまくゆく。


 千葉公園駅というモノレール駅がある。そこから乗って、千葉市立動物公園の駅まで行ける。モノレールはレールの下に車体がぶら下がる。それで落ちないから、切符が受験生の合格祈願のお守りになっている。わたしは相方に、このモノレールは逆立ちして乗るんだと、冗談で笑わせる。千葉に来てだいぶなるが、動物園もモノレールも初めてだった。一度乗って来てみたかったが、一人ではどうも行く気がしなかった。それと、動物公園なんか、自転車でわが家から行けるところにある。20分くらいで着く。いつも行くスーパー銭湯が二つあるところから近い。自転車で行ける範囲なのだが、交通機関を使えば、千葉駅まで出て、そこからモノレールと何倍も時間がかかって料金も高い。
 モノレールに乗った気分はいい。まるで遊園地に来た子供のようにもの珍しい様子で、外を眺めていた。
 動物公園はどんなものかと興味はあった。小さいと思ったら、それが広い。自然の森林の中を切り開いて動物園にしたようで、自然が残されて、上野の動物園よりは広い感じがした。昼時に着いたので、まずは飯だと、森のレストランへ入る。家族連れで混んでいた。土曜日だが、翌日の日曜はもっと混むのだろう。みんな、外では、シートを敷いて、思い思いに弁当を広げて食べている。レストランも満席で、ようやくテラス席が空いたので、そこに座って牛カルビ丼の定食をいただく。二人でこうして郊外の公園に来るのも別れてからはなかった。一年ぶりのことではないのか。動物園もあちこち行ったねと、相方は思い返す。上野動物園と多摩動物園、海外ではバンコクの動物園にラブアン島の野鳥園、ボルネオのオラウータン保護園などの回想をしていた。
 動物園が相方は好きだったが、わたしがそこに誘ったら、子供みたいと逆に言われた。千葉市はこういう施設は千葉市民で65歳以上は無料なのだ。美術館も博物館も只で、悪いみたいな気がする。だけど、見渡したら、老人が少ない。というより、いないのではないのか。若い家族連ればかりで、わたし一人が浮いている。
 象とキリン、ライオンとチーター、カンガルーにゴリラや猿のいろいろな檻を見て歩く。いなかったのは、白熊とカバとサイぐらいか。可愛かったのは、ペンギンの水槽の水を抜いて、飼育のお姉さんたちが清掃をしていたら、水の入ったバケツに餌があると思ってか、ペンギンたちが並んで待っていたところ。違うのよ、餌じゃないのよと、話しても判らない。
 広い園内を歩き疲れて、少し気分がすぐれない。なんだろうか。最近は体の調子がよくなかった。それで休憩にアイスを食べながらベンチに座る。何か不調があるとすぐにコロナに関連付けるのは、精神的な不安もあるのだろう。
 相方は、動物たちに「おおい」と、声をかけて手を振るのだが、この日はそれもなく、おとなしかった。子供らが多かったので、遠慮したものか。
 この公園もまだ紅葉は早い。千葉は11月末から12月上旬だろうか。大池もあるが、そこも紅葉で映えるのに、いまはまだ赤みがかってきたところだ。


 モノレールで千葉駅まで帰り、買い物してから京成千葉中央駅からわが家まで帰る。刺身は今夜の宴会でわたしはいらないが、相方の口に入る。公園を歩いて癒されたという。人に疲れたら、自然の中がいい。街中よりは郊外の散策だ。相方を連れ出すことが治療でもある。しばらくはそういう関係が続きそうだ。


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