コロナノコロ

コロナ生活から思うこと

着かず離れず

 相方のことが心配なのは変わらない。連絡がつかないでいた。それはスマホの電源をわざと落としているからだ。おかしい人で、スマホが乗っ取られたと、いつものように騒いでいるが、どうしようもない。電話をしたが繋がらないと、向こうから電話がくる。温泉に行きたいと言ってきた。声は明るく、正常な人に戻っていた。前に、わたしが相方に教えた幕張温泉のことを覚えていて、ネットでも評判がよく、関東のスーパー銭湯では一位とか。そうだろうなと思う。わたしもあちこち行ったが、ロケーションのすばらしさは、リゾートで、どこからでも全面の海が見える設計にしている。相方は電話の内容も盗聴されていると、警戒して、娘に電話をするときは、テレカで公衆電話からしていた。
 約束のわたしの休みの日、稲毛駅前で待ち合わせた。稲毛に来るのは二度目か。まごついて、電話で遅れると言ってきたので、駅前のコンビニ二階のイートインでコーヒーを飲んで待った。改札口で人と待ち合わせるのも久しぶりだ。身内でもその気分はどきどき感があっていい。30分遅れて相方がやってきた。駅前からバスで行く。自転車があれば15分でうちから行くのだが、一台しかないからバスにした。そのバスも幕張方面には一時間に2本よりない。しかも、あちこち迂回して寄ってゆくので時間もかかる。幕張は副都心のように、タワービルが林立し、大手の会社の看板が目につく。幕張メッセのイベント会場と三井のアウトレットモールだけでなく、大型の商業施設もいっぱいあり、たまにわたしは買い物がてら自転車で来るところだ。
 相方はここは二度目だ。5年前に、二人でアパホテルの上の階に泊まった。温泉とバイキング料理を堪能した。安いクーポンをとって、出会って一周年記念を12月20日にそこでした。あれから相方は来ていない。その後もどんどんとビルが建って、幕張も都会になった。
 ZOZOマリンスタジアムの終点まで行った。どこまで歩くのよと、相方の不満がまた出る。先が見えないと不安になり、わたしの後をついて歩くのが苦痛なのだ。それで、また始まったかと、幕張の浜へと出た。砂浜がずっと続く。そこに出たら、遠くに幕張温泉の建物が見えていた。目的地が見えたら、安心して文句を言わない人だった。
 9時開業だが、もう車と人がいっぱいだ。人気のある温泉と判る。わたしは三回目だ。まだできてから四か月だから、真新しい設備も相方は感心して見学していた。午前は露天風呂と内湯、サウナと入る。天気はよく、少し寒いが、遠くに富士山とスカイツリー、海ほたると、羽田空港、ディズニーシーなどが見渡せた。昼飯に食堂で海の見える席について、生ビールを飲み、定食をいただく。味もいいし、メニューも今風だ。午後から二人で岩盤浴に入る。8つの種類があり、汗も部屋着にびっしょりだ。アトラクションも、時間を決めて、ミストで部屋がかすむと、光とヒーリングの音楽で演出し、20分くらいだが、その時間が癒される。クールダウンの冷房室もあるが、外のベランダにハンモックがある。椰子の木と波の音と青空に飛ぶカモメ。寒くなかったら、ここは南国のビーチだろうかと思わせる。ハンモックに揺られてしばし。
 それからまた風呂に入り、日没の4時半に着替えて出る。屋上から富士山に沈む夕日を前回来たときに見た話しをしたので、それを見たいと上に行ったが、あいにくの雲に隠れてダイヤモンド富士みたいなのがカメラで撮れなかった。夕焼けもしていないのでがっかり。水平線には船。相方は絶賛していた。今度、娘を連れてこよう、と。
 帰りはシャトルバスで京葉線の海浜幕張駅まで送ってもらう。そこから二つ目の稲毛海岸駅で降りると、家まで歩いて17分くらい。途中のスーパーで相方の好きな刺身などを買う。千葉は海があるから海産物は安い。わたしはあまり食べないので、いつも肉と魚コーナーは素通りだが、相方は持って帰ろうと、いっぱい買った。魚好きの相方にとっては千葉のスーパーは最高だ。
 うちのマンションで晩飯と酒盛りをする。一人では飲まないが、つきあい酒はする。冷蔵庫から自分の作ったおかずの残りを出してきて、みんな試食されせた。漬物は白菜を漬けたが、どうもパサついいる。塩麹とたかのつめでビニール袋に入れていたが、相方は揉み方が足りないのだと、もう一度よく揉んで、明日は食べられると教えてくれた。やはり男の料理か。それと、おからも美味しくないと食べさせたら、美味しいというので冷凍したのも土産に持たせた。どうも相方の料理の味付けは上手だが、自分のは不味い。昨日、半分で50円の南瓜を買って煮たのがほこほこして美味しかったので、食べさせたら、ここ何年でも一番美味しいナンキンだわと誉める。関西では南京という。あれも喰え、これはどうだと、持たせて、食べさせ、冷凍庫と冷蔵庫の在庫処分をしてほっとする。いつまでも入っていたら、気になって夜も眠れない。これで悪くなるものはなくなった。全部整理できた。めでたしめでたし。
 遅くなるといけないので、稲毛駅まで送ってゆく。うちで預かった相方のリュックの中に前に受けた健康診断書が入っていた。それを東大病院に持ってゆくのだとか。いよいよ本格的に取り調べが始まったか。
 土産も重く、背中のリュックと紙袋二つ。電車と地下鉄乗り換えで江戸川区まで帰る。いまの新しいマンションは気に入っていると、見守られているので安全安心で、住み心地もいいようだ。千葉には来たいと言わなくなった。3か月しかいられないのも、事情によっては6か月延長ができるのだとか。その間、就職もできて、千代田区で紹介する安いマンションに引っ越せたら、そっちで一人で暮らそうと思っているようだ。わたしもどうせ来年は小田原の方へ引っ越す予定だが、相方とはこうした着かず離れずの関係は続くのだろうか。それにしても、あれほど、絶望し、自殺すると言った人が明るく、元通りなってくれて嬉しい。帰りは駅から自転車を引いてきたので、5分もかからない。
 帰ったら相方から電話で、冷蔵庫に入れた刺身を持ち帰るのを忘れたと。それは明後日、また取りにくるという。わたしは刺身は嫌いなのだ。また来たら来たで、またどこかに連れてゆこうか。


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