コロナノコロ

コロナ生活から思うこと

図書館デー

 10月4日は古書の日だった。古という字は分解すれば十〇に見える。それとこしょと4なのだとか。読書週間もあり、読書の秋なのだが、図書館デーというのがない。ネットで調べたら、4月30日が図書館記念日と出た。だけど別に何をするというのでもなく、きっと多くの人が知らない。本を愛する人に贈ろうというサンジョルディの日は4月23日だ。カタルーニア地方で行われているキリスト教関連行事だが、一時は書店も宣伝しても、いまいち浸透せず、不発で終わった。
 読書週間だから本を読もうというミーハーもいまはいないだろう。読書は週間ではなく、習慣なのだ。だから、日ごろから本を読まない人に今週は読んでといっても、読む習慣がないと、読書はしんどいだけだ。勉強の延長で面白さが判らないと苦痛でしかない。


 わたしは毎日が読書デーだから、一年中本ばかり読んでいる。もともと古本屋が長かったので、職業病みたいに活字中毒になっている。この休みの日には、週に一度は必ず行く稲毛図書館に歩いてゆく。休みで部屋にごろごろとはいたくない。図書館で借りた本とCDを返して、また借りる。それから新聞各紙と週刊誌ありったけ、新刊コーナーで読みたいタイトルを見つけたらその場で何冊か読んでゆく。
 この日はそれで終わりではなかった。電車で千葉駅まで出た。千葉駅周辺は入り組んでいて、何度も来ているが、いまだに迷ったりする。モノレールと私鉄とJRが交差していて、駅周辺もややこしい。まずは、どこかで休もうと、歩いたはいいが、もう迷っていた。千葉公園の入り口に来ていた。そこは桜が咲き始めた3月末に来ていた。半年ぶりか。引き返す。線路が邪魔して向こう側に行けず、どんどんとあらぬ方角に歩いていた。疲れてマックを見つけるとそこでコーヒーと借りてきた文庫本を出して読む。わたしの読書の捗る場所は、厠上、枕上、馬上ではなく、浜上、車上、珈琲店上だ。
 千葉は都会だ。人が多い。わざわざ密の空間にいるのもおかしいと、読んだらさっさと出るに限る。その日は土曜日で街はどこも人出でいっぱいだ。そこから川沿いに歩いて、千葉県の文書館に入る。テレビのニュースで知ったが、いまは企画展で、疫病に関する古文書などの展示をしているという。大きく立派な建物だ。受付に一人だけ職員さんがいた。体温を測り、手の消毒、用紙に電話番号と簡単な住所、入館日と時刻を書かせられる。公共の建物はどこもそうだ。展示スペースはそんなに広くはない。じっくりと江戸時代から明治、戦後までのインフルエンザや伝染病の記録を見て歩く。昔のポスターも面白い。マスクをせよと、呼びかけている、コロナの時代とまったく同じだ。百年以上前から、国も警戒を呼び掛けていた。入館者はわたし一人だ。金をかけたパンフレットを資料としていただいて出た。せっかくいいものをやっているのに誰も利用しないとは。
 出て県庁前にある羽衣公園を通りかかった。小さな街中の公園だが、見覚えがあった。そうだ。6年前の6月にそこにわたしはいた。ベンチに座って弁当を喰っていた。あのときは、小石川のアパートの契約が進まず、二週間も投げられて、都内をうろついていたときだ。毎日、どこかに泊まらないといけない。不動産屋からの返事待ちだった。わたしの出した書類を女子事務員が忘れていたとかで、そんなにかかった。その間、横浜のカプセルホテルに泊まったり、都心のネットカフェに泊まり歩いたりしていた。千葉にもネットで調べたら、一泊2千円のカプセルホテルがあったので、予約して行ってみた。駅から近いラブホテルばかりあるいかがわしい辺りにホテルはあった。前が汚い川で、壊れた自転車が沈んでいた。それも前に千葉駅に来たとき、確かめに見にきた。今回は、そのとき、行くところがなくて、県庁周辺まで来ていた。県立図書館にも入って休んでいた。わたしはどこでも行く人だと、思い出して笑う。あのときといまと何ら変わらない。行くところがないのは同じだった。まさか、あの上京したばかりの期待もあって、老後の身の置き場所を東京に置こうというときに、まさか、6年後に千葉市に引っ越して住んでいるとは思いもしないだろう。それと古本屋も倒産して、わたしは全然別の仕事をしながら、一人暮らしているとは。


 県立図書館もそこから近い。前に来たときは、コロナで閉鎖していたときだった。今回は二度目だが、古い建物の中に入った。6年前にも来た記憶が蘇る。入口で検温と用紙に電話番号と名前と日時を書かせられる。テーブルに空きがないと座れない。六人掛けに二人だけだ。密を防ぐための措置だった。それでも席はひとつだけ空いていた。新聞と地元の同人誌などをそこで見る。書庫にも入れたが、オープンではなく、一部だけにしている。2000万冊の蔵書はすべて検索していちいち頼まないといけない。それは国会図書館と同じだった。国会図書館も通勤の途中にあるので、また行って、青森の東奥日報やデーリー東北、陸奥新報などに半年分目を通そうと思っていたら、コロナで閉鎖していたのが開館はしたが、予約申し込みが必要で、その中から抽選で決めるというのだ。いつでも入れるのではなかった。どこもここも図書館の機能はコロナで半減している。稲毛図書館から取り寄せたほうが早い。しかも、一人2時間というタイムリミットがあり、退出予定時間を書いた紙を渡された。落ち着かないから、早めに出ることにした。
 この日は図書館デーだったが、さんざんだった。どこもそうだろうか。早くコロナよ終われ。


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