コロナノコロ

コロナ生活から思うこと

元気すぎるおばさんたちに負けないで

 太極拳には毎週土曜の午後に通っているが、先生から、初心者コースも平塚市でやっているので、それも申し込んでみたらという。半年コースで、五千円少し全部でかかるが安いものだ。市のスポーツ課で補助しているのだろう。さっそく、それに申し込んだ。近くの総合運動場の体育館で行うのだが、それは毎週水曜日なのだ。週に二回別々に通うことになる。先生はなんと同じで、水曜コースを選んだら、嬉しいと喜んでいた。いまの倶楽部に通っていると、わたしだけが初心者で、後はみんな何十年もやっているベテランばかりで、わたしが足手まといになっている。仲間のじいさんがとは言ってもわたしより年下だろうが、丁寧に毎回教えてくれるし、先生も手取り足取り教えてくれるが、一人だけ誰かの世話にならねばできない。
 それで、初心者ばかりのコースがあるというので、そっちにも申し込んで、8月半ばから練習が始まる。
 太極拳は面白い。理にかなっている。体の使い方が普段は絶対にしないポーズで、それが運動にはよさそうだ。ゆっくりとした動きの中でもゆっくりだからその体形を保つのが苦しいときもあり、踊るヨガみたいなものだ。
 練習になると、暑いからと、わたしが遠くの相模川に近いアリーナに行くときは、自転車でも歩いても行くといったら、これからは雨もあるし、炎天下ではきついのでと、近くまで仲間のおばさんたちが迎えに来ることになった。他の仲間たちも誰かの車でピックアップされて集まる。
 うちのマンションの近くの駐車場が広いセブンがあるが、そこに昼過ぎに迎えに来てもらうことにした。軽自動車に三人のおばさんが乗っている。白髪でおばあちゃんというような方も、身なりよりは若く、わたしより年がひとつ下なのだ。それで、宮古島に行って、台風に巻き込まれて、前回の練習は欠席したと、取りまとめの大老にメールで伝えたのが、みんなの耳にも入っていた。シュノーケリングに行ったことを話したら、そのひとつ年下のおばさんも、わたしもそれはやるのよと言うから驚いた。さすが、湘南おばさんたちだ。海は任せておけというようなものだ。
 車で八百屋の角を曲がるとき、ここの八百屋にはよく買いにゆくと話した。そうしたら、店頭は安いけど、気をつけないと、ヘタレたものを安く売っているからと、そう忠告してくれる。そうですね、三個で百円のキャベツなんかとても一人では使いきれないので、それは漬物にしたり、酢キャベツにして、ビニール袋に入れて冷蔵庫ですというと、あら、わたしも酢キャベツを作っているわよと、話しが弾む。それはいろいろと飽きるから、バラエティにするために塩昆布を混ぜたり、梅昆布茶を振ったりして食べると美味しいですよと、教えた。いいことを聴いたわと、それから車内は料理番組になる。
 よく喋るおばさんたちだが、男のわたしも負けてはいない。スーパー銭湯マニアなのでと、あちこちの銭湯の話。みんなが知らないこの辺りの温泉まで逆に教えてやる。街の情報もここで交換する。相模川河口の漁港にある乾物屋さんは安いと教えてくれた。それは戻さなくてもそのまま焼いて食べられると、半干しの魚もあるようで、美味しいらしい。わたしはあまり魚は食べないから、その店の前は通り過ぎただけ。並びにある漁師のやっている食堂では食べてみたいと言ったら、観光客相手だろうか、みなさんは知らなかった。
 スーパーのポイントカードもバカにならないと、どこどこはポイントがついてさらに3%も引いてくれるという情報や、まるで主婦の会話ではないか。ららぽーとのヨーカドーの食品コーナーも7時過ぎに行くと半額になるからと、たまにその時間に弁当を買いに行く話も生活感があっていい。
 わたしが平塚のことをなんでも知っているので驚いている。「なんでも聞いて、平塚のことなら任せて」と、わたしが言うと、まだ引っ越して三か月の人に、三十年も暮らしているわたしたちが教えられてと笑う。どこどこの飲食店が安くて美味しいという情報も教えた。
 太極拳の教室に行って、運動しても、おばさんたちの体は柔らかい。足を拡げて屈伸するとぺたりと上半身が床に着く。わたしは腹の肉が邪魔してとてもとても。先生は苦しがるわたしに、無理しないでと笑う。それにしても、よくみんなについていってと誉めてくれる。見様見真似でついてはゆくが、できないのは、歌舞伎の見得を切るときのように片足を上げて両手を広げて五秒くらいぴたりと決めて止まることができない。片足で立つのもふらついてできないのに、それを上まで上げて止めるなんてどうしたらできるのか。まだまだ修行が足りない。まずは腹をなんとかしなければ、それでみんなについていって、手が床に着くようにならないと。
 それにしてもおばさんたちばかりで、おじいさんたちは五人よりいない。みんな元気だ。ワクチンは二回目をみなさん打ったとか。わたしだけが来週に二回目だが、コロナなんかどこ吹く風という発辣さにただただ敬服するばかりだ。


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