コロナノコロ

コロナ生活から思うこと

蚊取り線香 緊張の夏だ

 コバエというか小さな羽虫が部屋でうるさいので、殺虫剤を撒いているが効かない。それで、ネットで調べたら、皿に水を入れてそれにだし醤油を半分入れ、その上から台所洗剤を垂らせばいいとあったのでやってみた。コバエなどは醤油の甘いのが好きらしい。それもなんだか効き目がなさそうなので、頭に来て、羽虫たちに「おまえら、どこから入った?」と聴いたが、答えない。どうやら言葉が通じないようだ。窓は網戸はしているが、滅多に開けない。むし暑いので昼でもエアコンの除湿にしている。それでもベランダのプラントに水をやるときとか開けたときに、侵入してくるか、網戸の隙間から入ってくるのか。小さいやつだから、どこからかすり抜けて入ってくるのだろう。台所にもバスルームにもいっぱいいる。りんごジュースを飲もうと置いておいたら、群がっている。相手も動物性たんぱく質かもしれないから、一緒に飲んでも栄養はありそうだ。
 こうなったら、燻り出してやると、怒ったわたしは、ドラッグストアに蚊取り線香を買いに行った。蚊取り線香なんか何十年ぶりだろうか。随分と使っていない。いまはベープマットみたいのが出ているから、青森にいたときから電子蚊取りマツトや60日用とか90日間使えるとか、ずっとコンセントにさしておくやつばかり使っていたから、なんと懐かしい夏の風物詩と嬉しそうに買ってきた。皿でもいいが、蚊取り線香入れは前に東京に出たとき、南国ビーチリゾートグッズばかり売っている店を見つけて、そこで買ったのが、椰子の木とサーフィンの絵柄のブリキ缶のやつだ。
 さっそく、それをやろうとしたらライターがない。わたしもタバコをやめてから三年が経つ。ライターと灰皿はもうないのだ。それでそれも買う。ライターというよりろうそくなどに着火するやつ。百円で売っている。昼に図書館やスーパーの買い物から戻ってきてから、さっそく渦巻に火をつけてみた。香りは変わったのか、あの懐かしい昔の匂いではなかった。部屋中がけむい。これでは人間も駆除される。たまらない。ネットで調べたら、蚊取り線香ぐらいの煙では、部屋の天井の煙感知器は作動しないとある。そうだな、いちいち、それに反応していては、あちこちで鳴る。
 夜まで燃えていた。半日は燃えている。とてもたまらんとベランダを開ける。昔は、よくこんな煙の中でも生活していたものだな。
 テレビでは今日8月2日から、神奈川など関東と大阪が緊急事態宣言発令と報じていた。東京も3千人を越えてすごい勢いでコロナ感染者が増えている。全国でも1万人を越えてきた。どうなるかと、緊張が走る。緊張の夏だ。
 さて、翌朝になる。どれどれみんな死んだかなと、床も掃除機で掃除しようかと、羽虫は全滅したと思いきや、朝飯のトーストを食べているわたしの前を、「おはよう」と、わざとらしく飛んでいる。「なにかあったの? ふふふ」と、嘲笑っているような羽虫たちがふよふよと部屋の中、わたしの目の前を飛んでいるではないか。くそっ、バカにされてと、わたしは悔しさに泣いた。
 こうなったら全面戦争だ。今日はベープマットも買ってきてやる。蚊と大きな蠅はいないが、小さな羽虫とはどんな生き物なのだ。別に悪さはしないが、よく果実などに群がっている。あれは、あれ以上は大きくならないものか。ネットでいろいろと調べると三種類ぐらいいるようで、気温と湿度でいなくなるというから、エアコンで部屋を冷やして除湿すればいいのか。
 いまはあまり見かけないが、昔は、むし暑い猛暑の夏の宵になると、山から一斉に街が羽虫たちに襲撃された。一度は恐ろしいことに青森の古本屋の灯りに誘われて、入口のガラス戸にもびっしりと張り付いて、開けたらどっと入り込み、蛍光灯の周りに群がる。殺虫スプレーをしたら、翌朝は床が黒くなり、掃いたら塵取りが山になるほど死骸があった。夜に窓から外の様子を見たら、公衆電話ボックスは中が黒い塊が蠢いているような状態で、とても電話なんか恐ろしくてできない。それがひと夏で何度かあった。羽虫の大量発生だった。最近はそんな光景は見たことがない。街灯にも群がる虫はいるが、見えなくなるくらいすごい羽虫は見ない。どうしてあんな小さな虫たちは大発生するのだろうか。天敵はいないのか。
 この部屋で羽虫に宣戦布告したが、昔のことをつい思い出した。


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