コロナノコロ

コロナ生活から思うこと

番町皿屋敷のお菊さんが平塚にいた

 いつも買い物に歩く平塚駅前商店街だが、そこにある郵便局裏の公園も何気なく素通りしていた。それが、ネットで出てきた平塚の史跡を見たら、なんと、その小さな公園にはお菊塚があるというのだ。平塚市の観光協会からのネットによれば、
 お菊さんは、平塚宿役人真壁源右衛門の一人娘で、小町と呼ばれるほどの器量の良い娘さんだった。行儀見習いのために江戸の旗本青山主膳方へ奉公中、主人が怨むことあってお菊さんを斬殺したとある。別の話では、主膳の家来がお菊さんを見染めたがお菊さんが言うことをきかないので、憎しみのあまり家宝の皿を隠し、お菊が紛失したと偽り、それで手打ちにされたとある。お菊さんは24歳であったとか。死骸は罪人として長持ちに詰められて江戸から平塚宿まで送り返された。処刑人は墓はなく、墓標は建てられないきまりがあったようで、それが埋められたところが空襲で焼け野原になった平塚の戦後の区画整理の際に、墓の移転をしたとき、お菊さんのものと思われる歯並びの揃った頭蓋骨が出てきたという。その地はいまの公園になり、お菊塚という石が置かれている。
 わたしは奇縁を思った。去年の春まで住んでいたのが、千代田区の番町で、その近くに帯坂があり、場所は九段南から靖国に向かう小さな坂なのだが、よく買い物にはそこを通った。帯坂の由来は、お菊さんが髪を振り乱し、ほどいた帯を引きずりながら駆けていった坂というから恐ろしい光景だ。番町皿屋敷はどこか解らないが、その近くで暮らしていたので、なんとなくお菊さんには親しみがあった。今回、平塚に引っ越してきたら、そこに塚があって、この地の人だと知るとなんとなくぞっとした。お菊さんが呼んだのか。それは現代の真夏の怪談みたいで面白い。


 お菊さんは切り殺されて井戸に投げられたのではなかったのか。それで、井戸から幽霊になって出てきて、10枚セットの皿が一枚なくなっているので、一枚、二枚、三枚、と数えて、九枚よりないので、幽霊がそのとき泣くというのが歌舞伎や芝居であるシーンだ。
 若いとき大阪にいたとき、姫路城に二回くらい遊びに行った。その本丸近くにお菊さんの井戸があった。おかしいなと、調べたら、全国あちこちにあるらしい。伝説というのは伝わるから伝説で、桃太郎伝説もあちこちにあるのと同じだ。後の人らが勝手に自分のところに持ってくる。きっと、それに近い怪奇現象があったりして、地元の人たちがそう思い込んで伝えたか。
 幽霊の件はお話でも、お菊さんがこの平塚の出で、番町のお屋敷で切り殺されたのは史実だろうか。ショッキングな話というのは後の人たちによって枝葉がつく。忠臣蔵もそうで、面白おかしく勝手に脚色されてくる。
 最近、一人暮らしの部屋で物音がする。誰かいるような気配を感ずる。がたりと音がするとはっとして飛び起きる。誰かいるのかと叫ぶ。お菊さんの塚で拝んだりするから、ついてきたのか。まあ、それでも美人で器量のいい娘なら、一度会って話してみたいものだ。幽霊ならそれも歓迎だ。と、また、がたんとものすごい音がする。今度はなんだと夜中に起きて電気をつける。誰もいない。すると、台所の床に鍋が二つ転がっていた。やはり、ダメだったか。1キロまでは重さに耐えられる吸盤付きのフックをダイソーで買ったが、もう吸盤はダメだな。みんな落ちる。いい方法がないものかと考えて眠られず。


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