コロナノコロ

コロナ生活から思うこと

南島小記 6

 台風の影響で定まらない日程と不安定な気分。これがまたいい。旅の日々にはこんな先が見えないときもある。NHKテレビの画面のサイドには台風情報が随時入っている。それによれば、昼で宮古島と結ぶ大橋は全部開通したとある。午後には雨と風も収まり、台風は離れて行っている。それで、市内の路線バスも運行開始した。夕方になると、今日までの空の便はすべて欠航したが、明日は全便運行の予定と出た。よかった。それならと、近くのスーパーに晩飯と翌朝の飯を買いにゆく。結構大きいチェーン店のスーパーだが、売り場を歩いたら。三割ぐらいしか在庫がない。多くの棚が売り切れでがらがら。晩飯にするものはないのか。カップ麺は補充されていた。腐るものでなければ台風のこともあるので店側は大量に仕入れているのだ。生鮮食品や野菜は空で、牛乳などの日配品も売り切れ。それでは何を食べようかと、缶詰のコーンとポタージュスープのカップにした。カップ麺は飽きたのか最近はどうも美味しいとは思わない。キャンベルのスープ缶が110円は安いとミネストローネスープを買う。後はスナック菓子とチーズでごまかそう。なんとでもなる。
 翌朝は、カーテンを引いたら天気で、雨はない。風もあまり吹いていないようだ。部屋を片付け、荷物をまとめると、階下の事務室に鍵を返して、もし、飛行機が出なかったら、また帰ってきますと、今夜一泊も予約したので、一日分を渡したら、返してよこした。戻らなかったらキャンセルにしておきますと親切。
 スーパーの前の停留所に空港行きのバスは来るが、果たして来るのか。飛行機が飛ぶとバスも連動してその時間に合わせて運行する。スーパーで少しまた土産にさんぴん茶と豚の耳のジャッキーのミミンガーをつまみに買う。軽くて薄いものがいい。
 バスは来た。スーツケースを持った観光客が乗っている。伊良部大橋を渡り、伊良部島から下地島へと走る。わたしが初日に歩いたところだ。海はまだ荒れている。風はいくらか残っていたが台風は北上してだいぶ遠ざかる。それでも今度は台風8号がオリンピックの東京や東北に向かって北上してきている。これからは毎週が台風ばかりなのだ。
 すでにオンラインでチェックインきしていたので、カウンターに寄ったのは、返金処理をしましたというメールで勘違いし欠航かと翌日の便もとってしまったのでキャンセルできるかということの交渉だったが、その返金とはフライト変更したときの毎日航空料金が変わるので、下がった差額800円少しを返金したというのだ。ややこしい。誤解される。それでも明日の予約はもう返金はできない。8千円ぐらい損をしたが、保険と思えばいい。
 帰りの飛行機は満席だった。いままで島に取り残されていた滞在組がどっと帰る。きっと、みなさん、わたしと同じでホテルに缶詰めで海では泳げず、不満であったろう。無事に帰れるからいいが、いままでで最悪に近い旅であった。このことをテーマにして小説も書き始めていた。収穫というと、そういう体験記ぐらいか。
 飛行機は少し揺れたが、2時間40分かけて午後2時半に成田に着いた。京成電車を乗り継いで渋谷から東横線で横浜、東海道線で平塚にようやく8日ぶりに戻ってきた。冷蔵庫は空にしてきたから、食べるものはないだろうと、スーパーで弁当などを買いこむ。
 夏休みの旅行は台風で空振りに終わったが、その仇を討つように湘南で泳ごう。ここは台風もなくべとべとした暑さもなく、実にいいところじゃないか。南の島というわたしの譫言は幻想であったものか。


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