コロナノコロ

コロナ生活から思うこと

南島小記 2

 ダイビングスポットもあるが、着いたばかりで時間もないから近くの入江を聴いた。そこまで足ヒレと水中メガネなどを持って出かけるが、鬱蒼とした人も歩かない暗いジャングルみたいなところを歩いていた。入江は見つからない。展望台には蛸の大きなモニュメントがありタコ公園といった。迷ったか。それで引き返して、港近くのビーチで泳ぎ、少し潜る。透明度はすごい。天気もよく波もなく穏やかで、それは明日から豹変する海とはまだ思ってもいなかった。
 砂浜の砂もさらさらで気持ちがいい。そこで寝て日焼けしていたら、背中が痒い。なんだろうと、起きたら、小さな穴から小指の爪くらいの小蟹が顔を出した。わたしの背中が巨大な肉に見えたか。
 島には山羊がいた。山羊飼いの男が何頭も連れて歩いていた。何かのんびりとした風景が日本でないような。ほほえましい山羊飼いをいつまでも目で見送っていた。
 夕方に宿に入りチェックインする。平屋の民家のような、入口にはネットをどこの家でもかけられている。それも後で理由を知ることになる。宿は畳の広い部屋がみんなのくつろぐ場所になり、浴槽のないシャワールームがある。奥に寝室があるが、ドミトリーで男女が二段ベッドに寝る。外国ではよく利用したホステルで懐かしい。この島ではノーマスクでいいらしい。外を歩く人たちも誰もマスクをしていない。ようやくマスクのいらない楽園に来たと思った。わたしだけではなく、多くの観光客たちは、緊急事態宣言下の監視され鎖された生活に嫌気がさして、自由な空気を求めて南の島に来ていた。
 さっそくシャワーを浴びて、そこでついでに洗濯も。歩き疲れたのでベッドに入り、つい寝ていた。ゆうべは空港で夜明かしで完全に睡眠不足だったから。
 和室のほうが賑やかで、三線の音もしていた。それで目覚めて行ってみると、みんなが集まりわいわいやっている。酒はわたしは飲まないので、コーヒーでつきあう。名古屋から来ている女性と東京の女性、台湾の青年、エンジニアで世界を飛び回っている青年と、宿のスタッフと思っていたら、何か月も泊っている得体のしれない初老の男性と金髪でエキゾチックな面立ちの女の人も先生を春に退職して放浪していて、このホステルに長居していた。初めて三線を手にした。弾いてみるが、津軽三味線と長さが違う。それとバチで弾くのではなく、指にはめる爪がある。
 みんなの専らの話題は台風だった。台風6号と7号が発生していたとは知っていたが、それがどこへ進むのかと、遊ぶことしか考えないで、気にもしないでいた。差し入れのアイスもいただく。キッチンも使えるから料理も自由。人との交流もあり、気楽でいいのがホステルだ。8時でもまだ空は明るかった。日本の西の端だから、日暮れが遅い。


 翌朝、みんなはまだ寝ていた。夜中まで起きていて騒いでいたり話していたりしていたようだ。パンとコーヒーは自由に食べて飲んでいい。二日目は徒歩で来間島を一周して、ビーチを見つけたら泳いだり潜ったりしようと、一人出かける。一周しても6キロというから、午前中で回れるだろう。島民160人くらいで、島には売店もほとんどなく、飲食店はいくらかある。自販機を見つけたが、札が入らない。釣銭がないのだ。小さな店があり、そこで沖縄のさんぴん茶などのボトルを二本買う。売店のおばさんが、台風が近づいて海は荒れてきているから、気をつけてねと言ってくれる。そこから先に展望台の竜宮城がある。大きな蜘蛛が至る所にいた。展望台に上ると、全島が見晴らせた。風は強くなる。波も出てきていた。台風はまだ南のほうで、980ヘクトパスカルと言っていた。それでも風が強くなると心配にはなる。
 島には大きなホテルも一軒ある。それぐらいでコンビニもない。人も車も通らないサトウキビ畑やバナナ畑の道を歩いて、適当に案内板の矢印で浜に降りた。島で一番綺麗な長間浜でシュノーケリングをした。スマホを上野で買った完全防水ケースに入れて、海中の珊瑚礁と小魚を撮ろうとしたが、後で見たらビデオモードになっていた。波も強くなり、海底からの藻屑で透明度は悪い。昨日と今日ではえらく違う。台風が近づいているとそれで判る。そこから長崎浜まで移動する。小さな浜だが岩がごつごつとあり、誰もいないのでプライベートビーチのようだ。
 そのうち雨が突然降ってくる。スコールのようだ。浜に至る細い道に大きなヤシガニと思ったのがいた。写真を撮ったが、後で宿で見せたら、それは大ヤドカリだという。ヤドカリも野球のボールより大きい。ヤシガニはグアムでも見たが、ここでは保護されていて、獲ったら10万円以下の罰金と看板にある。
 昼過ぎに一周してきて、宿の近くに戻ってきていた。そこでおしゃれなスムージー屋があったので、アイスコーヒーを頼む。そういう店もちらほらとあるが、閉めているところもある。それから宮古蕎麦と旗が出ていた近くの食堂に入る。客は若いカップルだけ。宮古ソバは沖縄ソバとは違うのか。パスタみたいなこしのあるうどんとも違う麺に豚肉の分厚い塊と魚の練り物が入っている。これは毎日食べてもいいと気に入る。食べ終わり、出たらいきなりの土砂降り。しばらく食堂の玄関で雨宿りだ。雨が降ったりやんだりと、不安定な天候だ。
 宿に戻ると、みんないた。今日が海は最後だと、明日からは台風で海は危険だからと、近くの入江に案内するというが、わたしは記録をタブレットで打って留守番にした。宿のおやじがみんなを連れてタコ公園下の入江に行った。
 みんなが戻ると、入れ替えにわたしがシュノーケリングに入江に一人出かけた。ところが満潮になり波も荒く、海は濁って全然入れない。宮古ブルーが灰色だ。それで諦めて港脇に行ってみた。そこでは波止場に波が高潮のようにかぶり、大荒れになってきていた。誰も泳いでいない。何か急に不安になる。大丈夫なのか。


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