コロナノコロ

コロナ生活から思うこと

平塚空襲

夏になると戦争の話になる。平塚に引っ越して真っ先に市街を歩いて見たのが、博物館であり、まずはこの街の歴史から見た。知らない、いままで足を踏み入れたことのない街で、まさか、ここに暮らすとは思いもしなかったから、自分が住む街ぐらい知っておかないとと、図書館と博物館は向かい合っているので、そこに入って見た。それから、八幡山公園へと向かい、そこを通ってわが家に帰ろうとしたら、何やら、五重塔ならぬ何重にもなったモニュメントが建っている。それを後ろから見たとき、ははん、これは空襲の慰霊塔だなと解った。いまは市民の憩いの場で、その周辺では子供たちが遊び、カップルがベンチで仲良くしていた。その公園はわたしのお気に入りで、よくいまも読書に来る。
 青森市も空襲に遭って、平塚市と比較して考えてみた。ウイキペディアで調べてのことだが、それによると、
 青森市の空襲は昭和20年7月28日の夜半10時過ぎ
 平塚市の空襲は同年7月16日の同時刻
 2週間くらい青森が遅い。
 青森市には青函連絡船があり、石炭の陸揚げ場があったので標的にされた。
 平塚市には海軍火薬廠と工廠、海軍航空廠という軍需工場がいっぱいあった。
 青森市は青函連絡船などの船舶が12隻沈没させられた。
 平塚市は現横浜ゴムの工場を中心に市内の工場が爆撃された。
 青森空襲は、硫黄島から飛んだB29が62機飛来する。
 平塚空襲では、その数138機というから倍以上だ。
 青森では83000本の焼夷弾が投下。
 平塚では447700本というから青森の五倍以上が投下された。
 青森の被害は死傷者1767人死者数は千人近い。焼失家屋は全市の9割の18000戸。
 平塚の被害は死者343人。焼失家屋が8000戸で約全市の8割だった。


 これを見ても平塚のほうが規模が大きい。それほど広い面積の工場が対象になった。青森市では人的被害が大きかったのは、当時の知事が防空法があるので、街を離れて疎開したものには配給停止にすると脅し、7月28日までに家に帰れと命じたのが仇となる。新型の焼夷弾の実験もあったというが、黄燐を使い、能力は増していた。それと同じものがその前に仙台空襲でも使われていて、バケツリレーて隣組が消化活動をしたら逆に燃え広がったという。それで仙台の市長だか警察署だったか、青森市にそのことが報告されていた。空襲で焼夷弾が投下されたら逃げろと、水をかけてはいけない、逆効果になることを連絡したが、聴かなかった。青森市の古川の跨線橋には憲兵が立っていて、避難する人々を制していたという証言もある。それが人的被害を増大させたという。それは後になって青森空襲を語る会で証言録を集めていて判ってきたことだ。わたしのペンの仲間たちがそれに入って、毎年証言録を出している。
 平塚は疎開したり先に避難していたので助かった人たちが多かった。それでも、B29は、平塚の周辺から爆撃してゆき、市街地へと攻めてきたことで、逃げ惑う人たちは逆に中心部へと戻って被害に遭ったのではないのか。一夜で投下された焼夷弾の数では八王子に次いで日本で2番目の多さというから、平塚空襲は歴史に残る被害を出した。
 いま、平塚市を歩いてみても、戦前の古い建物があまりない。みんな焼けて宿場町の面影もない。あるのは、すべて板碑や石碑ばかりで、かつてここになになにがあったというものばかり。隣町の大磯や茅ケ崎に行ってみれば、空襲には遭わなかったので、古い建物や歴史的建造物がいまも保存されていて、街の造りが昔のままに残っている。平塚に初めて来たときは、モダンな街だと思った。戦後の都市開発が焼け野原にやりやすかったのだろう。古いものが好きなわたしには少し物足りないが、平塚にいて、とてもいい街だと思うようになる。いつも郷里の青森市と比較して考えるが、海に面して坂のない平坦な街はよく似ている。そして、ぺろりと全市が焼けて戦後復興した街の臭いはどこか同じだ。違うのは、平塚は工場の街ということがわたしには珍しい。青森市にはほとんど工場がない。平塚は商業地区と工場が併存している。その数はすごい。戦前からだろうが、それで米軍に標的にされたのだ。青森にはない活気が工場ではないのかと思う。税収も多いから、豊かな感じはする。人口は青森市より少し少ないが隣接する市がずらりとあるのでマーケットは広く、巨大なモールが近隣にいくつもある近代都市になっている。
 7月になるといつもそろそろ観音様の日かとわたしが思うのは、青森市の空襲の慰霊でわたしの生まれ育った柳町にいまも観音様が立っていて、そこでは毎年7月28日に宵宮があり、うちの両親も町内でその役員をしていて、坊さんたちが何十人も来て読経し、ばあ様たちが和讃をうたう。夏は戦争の臭いがする。それが弔いの慰霊祭と共に小さいときからの思い出になっている。


×

非ログインユーザーとして返信する