コロナノコロ

コロナ生活から思うこと

なぜ旅に出なければいけないのか

 シルバー人材センターはわたしの思っていた勤務スタイルとは違っていた。そこの趣旨からかなりズレてきている。余暇を利用して老人に社会参加させて生き甲斐を見つけさせるというものから、普通の勤務スタイルになってきている。好きな時間にいつでも働けるというものではなかった。それは相手があることだから仕方がない。青森を出てくるときに、親戚の呉服屋の旦那ともそのことで話したのが8年前だった。東京に出たら、暇つぶしに空き時間を利用してバイトでもなんでもしたいというと、そういう好きな時間に働きたいというのが果たしてできるかなと呉服屋の旦那。もし、古本屋にそんなバイト志望が来て、好きな時間帯で働きたいがと言う人が来たら、採用するかい? と旦那は言う。それもそうだ。ただ、職種によってはいまは人が来ないので、家庭の主婦に合わせて、昼だけ2時間とか、勤務も1日だけでもとか、そういう柔軟なシフトに組み入れることもやられてきている。
 シルバー人材センターからさっそくオファーがかかった。歩いても行けるが、自転車ならすぐの西友のゴミ出しの仕事だという。水曜と金曜だけが休みで、二人でやりくりするという。時間は朝の7時から10時まで3時間。時給は千円少し。それなら、月に11回くらい出たらいいのか。バイト料は3万円くらいになる。別にそういう仕事でもいいけど、月に4日は旅行をするから休ませてほしいと言った。それは最初の面接のときの希望条件でも話していた。すると、センターの人は電話で、「どうして毎月旅行に出なければならないんですか?」と、聴いてきた。それは、自分の趣味だからです。と話しても、よく理解できないようだ。その職員さんは、旅行もあまりしたことがないのだろう。人によっては、旅行などで歩くのも面倒な人もいる。なんのために旅をするのかと理解に苦しむ人にいくら説明しても判らない。それでは、翻って、なんのために仕事をするのですかと聞き返したい。それは生活のためじゃないですか。年金だけでも生活ができる人は、そんな仕事に縛られてまで仕事をする必要もない。余暇の活用と人との出会い、社会参加ではないのか。
 それは前の学校の用務員の高齢者たちにも言えることだった。警備員たちも高齢者が多く、辞めるわたしに、退屈だろうと、どうして辞めるのかと引き留めた。わたしは彼らに言った。「明日、死ぬかもしれない。それだからいま思い残すことなく遊んでいたいのだ」それを言うと、理解してくれる。仕事ばかりして金を残しても何の意味もない。死んだらお終いだ。別に好きで働いているわけでもない。家にいても孤独で退屈だからだ。他に趣味もなければ楽しみもない。帰りに酒を買って、家でお一人様の老後でちびりちびりと飲むのが楽しみと、老人の一人は言った。それではやりきれない。
 センターの職員さんには、気長にお待ちしますから、希望に即した仕事がスポットであればご紹介くださいと返信した。お助けマンというのも必要だろう。会社によっては人事に穴が空く。困った、猫の手でも借りたい。そういう非常時に駆り出される便利屋さんになりたい。わたしもいままでは20以上の仕事をしてきた。技術職でなければ穴埋めはできるだろう。それがスポットの仕事と思っている。別にガツガツと仕事はしたくない。そういうシフトに組み込まれて身動きとれないなら、いままでの用務員でも警備員でもよかったのだ。辞めたのは旅行に出たいからだ。そういう若者が一人いた。南青山のマンションに勤めたとき、海外に出るからと、彼は辞めていった。半年働いて資金を稼ぎ、後の半年は世界を回っていた。似たような生き方をする人も身近にいた。


 この日は、久しぶりに平塚駅に行った。みどりの窓口で大人の休日倶楽部の今年の最初のフリー切符を15000円で買った。それで6月下旬から4日間、JR東日本の新幹線もバスも乗り放題なのだ。年に何回かそういう切符を発売するのをみんな利用したい。以前はそうして息子に古本屋を任せて、東日本はほとんど行き尽くした。行ったことのないところはないが、今回は震災10年目の復興した町を見てみたいと、知り合いもあちこちいるから訪ねて行ってもいい。切符を買ったらすぐにネットで旅館やホテルを予約した。一日目は福島のいわき市のリゾートホテル一泊、二日目は宮城の石巻の旅館、三日目は岩手の宮古市のビジネスホテルだった。みんな予約がとれた。一泊で3500円くらいとがら空きだった。緊急事態は解除になるだろうから、観光目的ではなく、復興のリポートもブログでしてみたい。いずれの町も何回も行っているが、被災する前の姿も覚えているし、被災直後にもお見舞いに車で走ったところもある。どこまでよくなったかを見てみたい。
 それと別で、7月のワクチン接種の後に、LCCで沖縄は宮古島に飛んで、三泊のゲストハウスも予約していた。そこではスキンダイビングをしたい。これは旅の病なのだ。バタバタと出たがるのは自分でも止められないビョウキなのだ。いままでの勤めでは、有給休暇をとって出歩いていたが、ご迷惑を職場の仲間にかけるのなら、別に働かなくてもいい。夏が近くなるとそわそわとしてくるのは、昔からで、これにつける薬はなさそうだ。


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