コロナノコロ

コロナ生活から思うこと

シルバー人材センターへ

 引っ越してから、決めたことは次々に実行に移している。予定通りで、これからの隠居をどう楽しくするかということのひとつが、アルバイトなのだ。年金だけでも喰えるが、旅行資金もあるが、小遣い稼ぎもしなければ。
 いまは、つきあいを断っているから、そんなに交際費はかからないが、青森にいたら、そうはゆかない。まずは冠婚葬祭だ。仲間の子供らもまだ結婚していないのがいるから、その結婚に呼ばれる。ペンクラブも高齢化しているから、葬式も前は月にひとつふたつはあった。そのたびに法事にも呼ばれる。すると何万円も消えてゆく。その当時はわたしは年金は少なく4万ももらっていなかった。満額の65歳までは何年かあった。そんなときに、やれ結婚式だ、葬式だと包んでゆくと、年金の大半が一回で消える。その後はコーヒー代にも事欠く。ペンクラブの会合に出ると懇親会費もかかる。それもないときは、古本をホテルの会場に持っていって、即売会をよくやった、売上の半分はペンクラブに寄付する。後の半分は恵まれない会員のために使うと。恵まれない会員って、おれのことだよ。そこから飲み代を出した。
 息子にはボランティアで古本屋の手伝いを何年もしてきたが、そのときは手を出してもらっていたが、息子も赤字財政で大変であったときで、古本も売れない。呑み代も週一でもらっていた。そのたびにはい、一万円と手を出すから、息子はたまったものじゃない。親父を東京へ出してしまおうと、古本屋の東京出張所を作り、そこでセリに参加させたり、神保町の三省堂に棚で入ったりと、金のかかる親父を東京に島流しにすることを決めた。それで出てきて7年だ。
 孫たちにも金はかかる。やれ誕生日だ、クリスマスだ、お年玉だ、ランドセルだとかかる。これでランドセルを買ってやれと三万円を息子の嫁さんに渡したら、義父さん、いまはこれでは買えないと言われて、いつからランドセルは高級ブランドバッグになったのだ? と驚いた。
 これは早くつきあいを断って、東京に逃げて隠れの生活をしなければと、誰にも住所を教えず、年賀状も出さないで、親戚間のお中元とお歳暮もやめた。現役時代ではないのだ。年金生活だけでは世の中の義理も欠く。好きな旅行にも行けやしない。東京に出てきても、着るものも買えないし、外食もできない。月に3万いくらで生活していた。食費は一日200円。何が買えるのか。東京の姉は働いていたが、そんな弟を見て哀れに思ったか、週一で飲みに連れて行ってくれた。靴も買ってくれてズボンも買ってくれた。おかずも作って運んでくれた。いい姉だった。
 そんなことではいけないと、働くことになった。相方という面倒をみないといけない人との出会いでがらりと人生が変わる。それもやがて別れると、ようやく、いまはお一人様の老後になる。年金も満額で、旅行資金もできる。何不自由ないが、時間だけが余りすぎる。それで、暇つぶしにバイトでもしてみようかと、昨日は、平塚市の生きがい事業団に行ってくる。証明写真を撮り、送ってもらった書類の申込書兼履歴書に書いて、Tシャツでもいいが、一応、ちゃんとした恰好で出かけた。歩いてゆけるところだ。図書館の近くなので、本も返しにゆく。
 シルバー人材センターともいう。60歳以上の年寄りが働く場を斡旋し、ちゃんと管理もしてくれる。支払い給与はそこを通して支払われる。それだからブラック企業や怪しい会社に関わることはなく安心だ。軽作業が多い。週に3日以内とか、月に10日以内のフルで働くことはできないと書かれていた。それなのに、行ってみたら、そうでもないのだ。スポットで働けるから、わたしのような、遊び人はいいと思って申し込んだ。ところが、それは建前で、相手のあることだから、会社によっては、週一の休みで、びっしりと勤務シフトに組まれる。前は夜勤などはできないと言われていたのが、いまは夜勤でも24時間勤務でもなんでもするらしい。シルバーだから、無理な勤務をさせられないのだが、させているようだ。雇用保険や社保はないのだが、代わりに団体保険に入る。怪我をしたら出るというもの。わたしは毎週土曜日の午後は太極拳があるし、月に一度は三泊四日の旅行に行くと言ったら、それでは難しいと言われた。ええ? 話が違うよ、たまに仕事をするのじゃないのか。いまは人手不足で、老人たちにもばっちりと働いてもらわねば困るのだ。老人はこき使わないと、日本は成り立たない。そんな時代になったのか。
 シルバー人材センターは青森にいたときもよく使った。菓子屋時代にも、倒産したとき、一人で残務整理も大変だったので、電話をして整理に来てもらう。古本屋のときは、10万冊の本の引っ越しがあったとき、2週間がかりで、6人で運んだが、本は15冊ずつ紐で縛らねばならない。しかも、ちゃんと整理番号順に重ねて、札を付けて運ぶのだ。それでおばさんを人材センターから来てもらう。50代の方であったがやはり若い子よりはよく働いた。賃金はセンターに振り込む。だから、働いている人は賃金の遅れや欠配というトラブルがない。
 センターの職員さんは、契約をして、わたしの顔写真を撮ると、いますぐには仕事の口はありませんがという。わたしは急ぎませんから、穴のあいたときでいいです。と、週に1日でもいいし、そんなに稼ぐ必要もない老後の暇つぶしなのだと話した。希望職種はないが、事務でも配送でも掃除でも販売でもなんでもしてみたいと、いままでしたことのない仕事をしてみたいと言った。それでも休まれたら困るところばかりのようだ。自由に仕事ができて、いろんな仕事を覗いてみたいのだが、いまのところはシフトに縛られる仕事ばかり。それなら、学校の用務員も警備員でも同じだ。縛られたくないから、申し込んだのに、気長にオファがかかるまで待機することにしようか。


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