コロナノコロ

コロナ生活から思うこと

定年旅行は近場の秩父へ1

いつもそうだったが、どこどこの旅館を予約したよと、一方的に相方はわたしに告げるのだった。なんの相談もないが、それはわたしのためなので、サプライズのつもりだろうが、旅行としては外れはなかった。今回は、コロナで近場に行くことにする。秩父はいままでも何度か行っていたが、その温泉は初めてだった。

 湘南新宿ラインで池袋までゆくが、時間があるので、平塚の美術館に寄ってゆく。いま、二つの展覧会が同時開催されていた。この前のNHKの日曜美術館でも取り上げられていたのを二人で見た。川瀬巴水の版画と、柳原義達の彫刻展だ。蒲鉾型のツインの展示館に広々とした庭園が自由空間で、ガーデン椅子など配置して座って本を読んでいる人もいた。現代彫刻がその空間にも配置されている。岩手県排出の舟越保武の彫刻もいくつか展示されていた。前々から入ってみたかったが、高齢者の市民は無料なので、それまで待った。版画は古本屋をしていたときに、巴水の装丁本が入ったことがあるので知っていた。色合いがなんともいえず、翳の部分も微妙に明暗があるので近づいて見ないと判らない。柳原のデッサンはサインペンで描いただけの一枚がどれも作品になる。空間のとりかたに唸る。

 いいものを見たと、相方も感心していた。ますます平塚市のファンになりそうだ。

電車で1時間で池袋だ。そこから西武池袋線で西武秩父駅まで行く。電車の出発まで時間があったので、ホームのベンチで昼飯の弁当をいただく。そんなに混んでいないので、人の目もなく、気にしないで鯛めしと牛飯を。

 西武秩父駅は前に来たときは改装中で、祭りの湯というスーパー銭湯がオープンすると書かれていたが、それが営業していた。売店で地酒など、宿で飲むものをいろいろと買う。わたしは栗と小豆の和菓子を。どうしても甘いものに目がゆく。

 駅前に宿のマイクロバスが迎えにきた。他にひと組の老夫婦が乗った。秩父市は市だから、全国チェーンもある。そんな田舎でもない。車で15分、北の方角に走ると、今日の宿の新木鉱泉の御代の湯という200年も続いている埼玉で最古の旅館に入る。大きな農家を改装して造られた旅館で、内装は新しいが、柱と梁が太くて当時のままなのだろう。二階の部屋に通された。広い和室で、天井も高い。壁は漆喰だ。廊下は鴬張りできゅきゅと鳴る。屋根裏部屋にも上れるが、そこは蚕室であったという。いまは、マンガ本を並べ、畳を敷いて、図書室にしている。コーヒーはいつでもロビーで飲める。

 まずは、この辺りの探検だと、秩父三十四所観音霊場があり、その四番の金昌寺と五番の語歌堂に宿から歩いて行ってみる。金昌寺はよかった。五百羅漢と赤ん坊を抱いた慈母観音がマリア像のようにも見えた。苔むした古い石仏と寺門がいい。

 語歌堂は遠かった。名前が気になり、行ってみたら小さな寺で、旅の僧が地元の旦那に和歌の奥義を一晩で教えたところから名付けられたとある。わたしもそれにあやかりたいと拝んでくる。

 戻ってから風呂に入る。鉱泉だから、温泉ではないが、15度の鉱泉を沸かしている。成分は同じで、アルカリも強くph9.5と書かれていた。卵水と言われ、ぬるぬると肌にまとわりつく。夕方と夜と朝と三回入ったが、客は十数人宿泊していたか。風呂では一人ぐらいよりいなかった。

 晩飯はよかった。広い和室に椅子テーブルで、次々に出てくる料理もどれもいい。先付け、前菜は海老とつぶ貝生ハム水菜巻と献立にある。刺身と小玉ねぎのクリーム煮が美味しかった。岩魚の塩焼き、煮ものに天ぷら、上州牛の陶板焼き、デザートまで次々だ。久しぶりに宿の味をいただく。朝飯もまたよかった。あまり旅館の食事には期待していないが、ここはサービスもよく、満足した。


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