コロナノコロ

コロナ生活から思うこと

定年後のぽっかりと空いた穴を塞ぐために

夢というのは不思議なものだ。大学に出勤していた。正門で警備員に社員証を提示しないと入れない。その社員証がない。そうだ、もう退職したのだと、夢の中でまた引き返していた。電車賃を損したと。

 相方は6月には外反母趾がひどくて外科手術で3週間も入院する。それで、いまのうちにわたしに逢いたいと来た。コロナで入院中の面会は身内でもできないらしい。リハビリで7月までは出られないので、いまのうちなのだ。それで、どんな生活をしているか様子を見にきた。

 この日は朝からスーパー銭湯に行く。隣町の茅ケ崎にある竜泉寺の湯。そのチェーンにはこれで全部行くことになる。確か、二人で八王子と横浜と埼玉の草加市の同じスーパー銭湯に行って、みんなよかった。茅ケ崎は少し遠いと行かないでいたのが、今回実現する。相方も温泉好きで、関東のスーパー銭湯という雑誌を買ってきては、まだ行っていないところを調べていた。その雑誌には、岩盤浴が無料になるとかのクーポン券もついていたりする。安い雑誌だが、それを使えばかなりお得だ。

 平塚駅前から無料のシャトルバスが出ている。他に若い女性二人が乗り込む。茅ケ崎は自転車でも行けるが、6キロとあるから、一度歩いて行ってみよう。川を越えたら茅ケ崎だ。その温泉は、マンションに囲まれたおかしなところに建つ。何か温泉らしからぬロケーションだが、まあいいか。

 中はバリ島の雰囲気で、そういうスーパー銭湯は他にもあった。バリの民芸品も飾り、ガムランなどの民族音楽をBGMにしていたりする。午前中は風呂に入り、出たら昼飯を食堂で、午後は岩盤浴と風呂に入り夕方にまたシャトルバスで送ってもらうことにした。

 スーパー銭湯もひと月ぶりだ。千葉の引っ越しのときに4月の末、新習志野駅前のスーパー銭湯に泊ったとき以来だ。引越しで忙しかったこともある。相方はその間、一人で杉並区などの銭湯に行ったという。月に二回は行っているが、安い料金で一日ゆったりとできるし、健康的な娯楽としてはこれは最高だ。

 内湯は炭酸泉とサウナ、ジェットバスなど、露天風呂はシルクの湯と泡の壺湯、座湯と寝湯などがある。午前中は陽射しがあったので、いつものように、全身をビーチチェアに寝て焼く。他のおやじたちも股をおっぴろげて、グロテスクな恰好で陽に焼けていた。じいさんばかりだが、午後からは若者たちが入ってくる。平日は空いていていい。

 昼飯はこんなところでもうまい。最近は競争激化で、食事もありきたりのものではなく、美味しくサービスしないと、客は来ないのだ。

 午後から岩盤浴だが、30分おきにアルコール消毒しますと全員出される。うとうとと気持ちより眠っているときに起こされる。それもコロナだから仕方がない。清掃のおばさんに、「大変ですね。仕事が増えて」と、ねぎらいの言葉も出る。平時はない消毒作業がすごい。わたしも学校でいろいろとやってきたから知っている。

 最後に風呂にまた入り、汗を流す。体重計に久しぶりに載ったのだが、そんなに減量していないでがっかり。相方もそうで、やはり食べているのか。


 夕方、茅ケ崎からシャトルバスで15分で戻る。車なら早い。平塚駅から買い物して帰るとき、相方のリクエストで、またららぽーとに行く。気に入ったようだ。入院するから、パジャマ代わりのスエット上下を買いにゆく。それと百円ショップでガーディニングのポットやミニトマトの支柱、足りなくなった梅酒の保存ビンなど。

 そこにあるテナントのGUに入る。それがユニクロと同じ経営とは知らなかった。前に渋谷の店に入ったら、スニーカーも売っていて、580円で買った。デザインも色もよかった。それでなんと安い。安物には見えないのだ。味をしめて、また靴も見る。パープル色のスニーカーが580円もあったが、色がどぎついので、薄紫の980円のにした。わたしは紫が好きなのだが、どうもやさ男の好みそうな色で嫌なのだが、思い切って履いてみる。相方は悪くないという。そうか、モデルがいいからな。

 若い子ばかりの店でじじいが若向きのものを選ぶ。違和感があるが、安いから。滅多には入らない店だが、二人ならいい。会計のときに会員アプリがあると、さらに500円引きとかものによって安くなるので、スマホでQRコードを読み取ってやったが、月末近くなるとギガが越えて低速化して、遅い。売り場のお姉さんが手伝って、20分もかかり、ようやく会員登録できた。

 それから地場産品の店などで、珍しい地元の食材を買う。そのとき、ららぽーとのポイントカードはお持ちですかと、あちこちで聞かれるので、作った。安い店もあるから、これからも来るだろう。うちから歩いて15分で来れるから。

 スーパーのヨーカドーもあって、広い売り場で今夜の食材を買う。明日の弁当が半額、ドリンクなども買う。明日は秩父旅行一泊に出かける。それで朝飯なんかもそこで買う。6時に行くと半額になると覚えた。これからは年金生活だから、できるだけ食費も抑えよう。湯水のようには使えない。相方なんか食費は1万円で月にやっているという。わたしは使いすぎだ。少し見習って、質素倹約の生活に戻さないと。

 それにしてもまだ仕事を辞めたという感覚がない。いつもいままでの繰り返しの勤務シフトが生活のリズムになっていたから、明日は仕事と思ってしまう。体が覚えてしまい、それから脱却するまで少し時間がかかりそうだ。いわば、定年後の時差ぼけみたいな。

 仕事のない、毎日が日曜日の生活はどんなか、わたしは知らない。60歳で定年と、それでもずっと息子の古本屋を無給で手伝い、上京してからもずっと70になるまで働いた。21歳から働いて、半世紀、ようやく50年の刑を終えて出所できたら、ぽっかりと空いた時間、それを温泉と旅行と本と書き物で埋めよう。海もある。趣味の世界へと本格的に移行できるのだ。隠居生活は暇ではない。きっと現役時代より忙しくなりそうだ。

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