コロナノコロ

コロナ生活から思うこと

禁酒時代

 酒は提供しないことと、コロナの緊急事態宣言下ではまるで禁酒時代が来たかのようだ。日本では近代ではそういう時代はなかった。海外では、制限されているのは普通にいまもある。イスラムの国では禁酒だ。旅行に行ったら、それでもどこかで売っていた。外国人が買うのか、酒ばかり売っている店が必ず裏通りなどにあって、それを見つけるのが臭いで判るようになる。それでも、日本の倍はしたり、バカバカしくて買う気はしなかった。連れと、飲みたいねと、缶ビールの小さいのを400円で仕方なく一本だけ買った。それが、免税の島があり、同じ国とは思えないほど激安になる。マレーシアに二つあり、ひとつはランカウイ島で、タイとの国境にある島にフェリーで渡ったときだ。税金がかからないので、タバコも一箱50円くらいで、缶ビールのロングで60円、2リッターの大きなボトルでも200円もしない。安い安いと毎日が酒盛りで、ここに暮らしたらきっとアル中は確実だなと、警戒心も出た。もうひとの島がボルネオ島の沖にあるラブアン島で、そこにも一週間ぐらい泊まったが、酒とタバコが安くて助かった。洋酒も安く、コニャックの怪しいボトルが500円で売られていたのを買ってホテルで飲んだ。その島も免税の島だが、いまいち観光客を呼べずに苦戦していた。大きなショッピングモールは半分は閉めていて、ゴーストタウンのように暗かった。
 ハンガリーに最初に行ったときも、初日に泊ったホテルの前に24時間営業の大きなスーパーがあった。着いたのが夜で、さっそく買い物に入った。ワインなども一本100円と安い。ビールも大きなボトルで90円と、これはすごいといっぱい持ってレジに行くと、レジのおばさんが、あちらの言葉でまくしたて、酒類はすべて脇に寄せた。前にいた紳士が、英語はできるかと、話してきて、この国では夜10時以降は酒は売れないのだと、法律で禁じていることを話した。時間で酒が売れない? 初めての経験で驚いた。タイでもそれはあって、コンビニで昼間に酒を買おうと、入ったら、酒の入った冷蔵ケースには封印されて、何時から何時までは販売できないと書かれていた。そうなのだ。24時間いつでも酒が買えるのは日本とどれぐらいの国があるものか。インドでも酒はダメで、外国人観光客のためにレストランやホテルでは出してくれるが、われわれが入る現地人の食堂では出していなかった。案内してくれたタクシーの運転手が、買ってくるよと、札を渡したら、どこからか買ってきて、食堂でビールが飲めた。そういう店を知っていて、密かに買って来ないと、酒が飲めない禁酒の国もある。


 考えてみたら、飲酒運転もいまだに後を絶たず、酒のために人生を狂わせたアル中もいるし、肝臓を悪くして早死にしたりと、酒は少しなら薬だろうが、たいていはいいことがない。なければないほうがいいと思うのは、わたしは酒が嫌いだからだ。いまもつきあい酒は飲むが、一人でいれば絶対に飲まない。一年で少しも口にしないでも生きてゆける。何がいいのか判らない。美味しいとは思わないのだ。酔いたいために飲む必要もない。前はブランデーを置いておいて、睡眠薬代わりにナイトキャップで少しだけストレートで飲んで、寝たりしていたが、いまは睡眠導入剤を処方してもらっているから、それで眠れる。
 弱いということもある。ビールをコップで一杯で酔う。顔が赤くなる。体が受け付けない。だから、禁酒の国で暮らしても、アル・カポネのアメリカのような禁酒時代になっても平気なのだ。
 いまはタバコもやめて三年、酒も断ってとは言わないが、相方と別居してからは、たまに会うとビールの小さな缶かワインを半分ずつ飲んでそれで終わる。それ以上は悪酔いするからやめるのだ。ほとんど飲まないに等しい。先日はガストに入ってランチを食べたが、酒類はメニューから外されていた。酒の提供はないというのは本当だった。
 青森に帰って、また文学仲間たちと逢えば、はしごして飲むのだろう。そのときは、浴びるほど飲むが、そんなに酔わないのが不思議だった。強いのか弱いのか、自分でも分からない。ただ、親父も祖父も弱かった。うちの息子たちもそんなに飲めない。遺伝子がそうなのかもしれない。酒の代わりの甘党だが、おはぎにアイスにシュークリームに目がない。そっちのほうがはるかに怖い。

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