コロナノコロ

コロナ生活から思うこと

パープル色のアコースティックギター

 よせばいいのに、またギターを衝動買いする。それもネットで見た6千円もしない安物で、初心者向けのアコースティックギターだ。色は思い切ってパープルにしてみた。どうせ、玩具のようなものだ。
 若いときはクラシックギターを独学していた。中学のときに親父からクリスマスプレゼントとして買ってもらう。NHKの教育テレビで阿部保夫先生のギター講座があって、テレビを見ながら一緒にギターを弾いた。世はエレキギターブームで、本当はエレキが欲しかったが、それは不良がやるものという世間のイメージがあり、おとなしくクラシックギターにした。高校生のときには、フォークブームになり、エレキブームから移行する。同級生の弾く「パフ」がアルペジョで弾き語り、恰好よかったが、どうも、コード進行に慣れていないわたしは、みんなについてゆけず、元より音楽的才能がゼロに近いので、ヘタの横好きになっていた。
 それでも大学時代も密かに続けてはいた。とても人には聞かせられるものではなかった。お茶の水にあった新堀ギター教室にも通った。すると、独学でやってきたアルアレイ奏法から直されて、弦をはじかないで、次の弦で止めるアポヤンド奏法にさせられたら、急に弾けなくなる。しかも、姿勢も悪いと正しい姿勢に直されたら、それまでの弾き方からほど遠く、急に初心者みたいになる。先生から言われたのが、歌うように弾きなさいと、わたしのは硬く、楽譜を正確に弾こうとするから、ぎこちがない。リズムと音符の長さも意識しずぎて、とちってしまう。多少の間違いなんか気にしないで、すらすらと流れるようには弾けない。どうも理屈で音楽をしようとしているところが間違いだった。
 それでもレコードを聴いて、あれも弾きたい、この曲もいいなと、楽譜だけは買ってきて挑戦するが、土台無理な難曲ばかりで、高望みだった。練習曲ぐらいでやめておけばいいのに、バッハの無伴奏ヴァイオリンソナタの中の有名なシャコンヌをギタリストのセゴヴィアが編曲した楽譜を買ってきて、途中まで弾くがその先まで行けずに挫折する。レイエンダというトレモロの曲も好きで楽譜で練習したが、それも指がついてゆけずに挫折する。一曲もものにできずに、それでも諦めない。自分で弾いた曲をテープに録音して聴いてみると、顔が赤くなるほど恥ずかしく、とても人前では披露できないと、クラシックは諦めた。それで弾き語りとか、歌謡曲などの楽譜で適当に遊んでいた。
 学生時代は、神田の楽器店を覗いたら、いいギターがぶら下がっていた。売り場の人が弾いていたのが、ヤマハのG7という、裏板の真ん中に金の線が引いてあるのは高いギターだと知らされていたが、当時初任給が2万円のときに7万以上したギターをどうしても欲しくて、月賦で買った。36回払いはバイトして返した。学生だったから、東京の伯母に保証人を頼んだ。ヘタなのに、よくそんな高いギターを買ったものだ。それもつい7年前まであったが、使わないので、古本屋に飾っていたら、買いたい人がいて、何万円かで売った。
 ギターを手にしないで30年以上は経っていた。通販で来たのはフォークギターで安物という感じはした。チューニングの仕方を忘れていた。ドレミは判るが、はて? と、ネットで調べたら出てきので、その音と合わせた。昔は調子笛とか音叉を持っていたが、いまはネットから合わせられる。ようやく思い出す。楽譜は平塚駅前のブックオフに行ったら、昔の懐かしいフォークソング300曲の弾き語り楽譜が売られていて、買ってきた。次に、映画音楽も弾いてみたいと、若いときを思い出してネットで調べたら、メルカリで出品している人がいた。さっそくまたメルカリの会員登録して、支払いをコンビニまでその夜に行ってやってくる。「いそしぎ」「慕情」「ひまわり」「ブーベの恋人」「鉄道員」「夜霧のしのび逢い」など、それにムード音楽も入り、「ジャニーギター」「二つのギター」などもよかった。
 ギターを買おうとしたのは、突然、ある曲が口から出たからだ。哀愁を帯びた映画音楽「悲しみは星影とともに」だった。それも弾きたいと、ギターを買ったが、ネットで調べたら、いまはギターピースという一曲だけの楽譜がネット配信しているのだ。そういうサイトに登録して、「悲しみは星影」もあったので300円で購入する。クレジット払いで、近くのローソンまで行って、複合機から楽譜がコピーされて出てくる。いい時代になったものだ。弾きたい曲はこれからも検索して出てきたら、コンビニから楽譜を出せるのだ。PDFのファイルだから、ちょうどプリンターも買ったので、自分で印刷もできる。
 またひとつ青春時代を取り戻すように、ギターに触れていた。指はなかなか動かない。これはボケ防止にもなるし、指先を動かすことで脳梗塞予防にもなりそうだ。両手の指を老人が動かすことはいい運動になる。ヘタクソでもいい。周囲に騒音を撒き散らさないように注意して、老後の暇つぶしができたと喜んでいる。


×

非ログインユーザーとして返信する