コロナノコロ

コロナ生活から思うこと

駅で流れる発車メロディ

 JRだけではないが、あちこちの駅で、その駅にまつわる歌を電車が出るときに流している。平塚駅は、お祭りとして知られている平塚七夕にちなんで、たなばたさまがホームに流れる。


 ささの葉さらさら
 のきばにゆれる
 お星さまきらきら
 きんぎん砂子


 わたしは引っ越しを決めて、初めて平塚が七夕祭りで有名と知った。仙台の七夕のほうが知られているが、それに似たものだ。平塚駅にはいつも飾られている。
 平塚から通勤電車で隣が茅ケ崎、その隣が辻堂だが、辻堂駅では「浜辺の歌」が流れる。いい歌だ。小学校の音楽の教科書には必ず載っていて、子供のころにわたしの好きな歌のひとつだった。


 あした浜辺を さまよえば
 昔のことぞ しのばるる
 風の音よ 雲のさまよ
 寄する波も 貝の色も


 林羅山の家系の歌人の林古渓の作詞になる「浜辺の歌」は辻堂の海岸を思い出して作詞したといわれている。
年なのか、唱歌が思い出されて口づさむ。キーホルダーにしている5口のミニハーモニカでたまに吹いている。小学生のときに習ってハモニカで吹いたのがいまも吹ける。
 他に好きな歌は、春らしく「朧月夜」で、♪菜の花畠に 入日薄れ と、歌えば、小学校の校庭の鉄棒を思い浮かべる。いま、学校で働いているが、近代的な学校ではなく、わたしのいた田舎の木造校舎だ。山の端と歌っても、東京からは山が見えない。風景が歌とは違うのだ。
 「埴生の宿」は「ホーム・スイート・ホーム」が原題で、イングランド民謡だが、それも好きな歌だ。ギターでも若いときはよく弾いた。映画「ビルマの竪琴」で、その曲を竪琴で弾く僧になった水島上等兵の姿と重なる。いい映画で、その曲がすっかりと好きになる。
 湘南に住んだからというわけではなく、「鎌倉」も若い時から好きな歌で、よく歌いながら由比ガ浜から七里ガ浜まで歩いた。哀調のあるいい歌だが、尋常小学校の音楽の教科書に載っているというから、親の世代はみんな知っている。


 七里ヶ浜のいそ伝い
 稲村ケ崎名将の
 剣投ぜし古戦場


 海とか夏という歌が好きで、カラオケでも歌ったりするが、誰も唱歌なんか歌わないから、仲間から突然キャンセルされて、途中で歌が終わったりする。聴きたくないのだろう。呑みの席ではしらけるか。
 「夏の思い出」も好きな歌で、何年か前の初夏に尾瀬沼をハイキングで一周したことがある。作詞の江間章子さんは、青森に来たことがあり、うちの喫茶店でコーヒーを飲んだ。そのとき、色紙に「夏の思い出」の詩を書いてもらったのがあったが、昭和30年代のことか。その色紙は古本屋のときにセリにかけて売ってしまったが。


 子供のときのいい歌を近頃はよく思い出す。ここ学校でも音楽の時間には音楽室から歌が聴こえてくるが、わたしの習った歌とは全然違うのだ。いまの小学生は、唱歌なんか習わないのだろうか。歌も変わるから、時代とともに文語調は駄目だし、戦前の歌詞では言葉が判らない。♪うさぎ追いしかの山 は、うさぎ美味しいと聴こえる。うさぎって食べられるの? イギリスでは肉屋に吊り下げてあったな。 
 童謡が駅から聴こえてくるのは新鮮だった。そこの街にまつわる歌があるというのは、聴いていて心が温まる。

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