コロナノコロ

コロナ生活から思うこと

同人誌印刷

ワープロを使っていたころは、まだパソコンを手にしていなかったときだ。息子たちのほうがパソコンに飛びつくのが早かった。平成7年にはもう息子二人はおふくろだから、彼らの祖母から高額なパソコンを買ってもらい、それで通信して多額の通信料の請求がわたしのクレジットカードに来て怒った。三か月で30万使われた。ニフティのチャットで、当時はまだ通信費が一分いくらと高いときで、親もそれは知らなかった。息子たちは、マンガの同人誌をそれで描いたり、版下を作り、高校のマン研でマンガの同人誌を出しているらしかった。そのころは、わたしも詩の同人誌を仲間で出していたが、ワープロで版下を作り、それをコピー機で出して、ホッチキスで止めるという手作りの冊子だった。それが、息子たちの綺麗な印刷製本が、広島にあるある印刷屋に頼んでいると聞いて、その値段を知って驚いた。安い。いままでの値段とは全然別もので、それがオンデマンド印刷だという。オフセットもあるが、それでも地元青森の印刷屋に頼むよりははるかに安かった。その価格表も息子からいただき、それからはコピーでやらず、ちゃんとした印刷製本で出そうと、ワープロで版下は作ったが、それを台紙に貼りつけて、パラフィンをかぶせ、トンボをつけてと、それでもやっていることは、昔からの版下作成で、それを広島に送ってやった。A5サイズで、30ページ、100冊で15000円もしない。しかも、表紙はエンボスのコート紙の厚紙に2色刷。糊付け製本で体裁はいい。詩人仲間8人から2千円ずついただくとできるのだ。それで一人に10冊ずつ分けられる。いままでのコピーでホッチキスの中綴じとは全然違う。上がりが綺麗だった。写真も入れられて、まあまあの出来なので、それからはイラストだけでなく写真も入れた。
 別の文学仲間たちが集まって、新しい同人誌を出すことになった。弁護士先生が主宰し、わたしにも声がかかった。そこはエッセイが主体だが、俳句もあり、政治的な発言もできるという青森の批判精神の声を雑誌にすることにしたのだ。その表紙デザインをわたしがして、そのころはパソコンをすでに導入していたので、デジタル入稿までは行かなかったが、詩の同人と並行して、広島の印刷所に版下で送ってやった。ページ数は最初は50ページであったものが参加も多くなり、終いには300ページぐらいの厚さになると、もうそれは単行本だった。その校正だけで二日はかかり、版下作成も手貼りでは大変になり、編集ソフトを買ってやるようになる。それまでは、ノンブルまで切り貼りしていたものが、DTPで一括処理して、版下印刷がスムーズになる。それでもそれにかかる時間も大変で、古本屋の仕事をしながら、やっていたので、時間がかなりとられた。息子が、そんなわたしを見て、金にならないのは仕事ではない、趣味事に何日もとられて、仕事がその分遅れるんだからと怒っていた。それで、同人を抜けることにしたのだ。弁護士先生に、編集ソフトを貸して、やり方も教えた。途中で抜けるのが心苦しかった。


 いま、それを思い出して、他にネット通販の印刷屋がいっぱいあることを調べた。おふくろの書いた川柳を一冊の本にしてやろうと、見積もりももらう。大阪の印刷所が安かった。百ページ、百冊で、表紙はカラーでA5サイズ、表紙はアートポスト、本文上質70キロ、納品まで含めて4万円からおつりがくる。随分と安くなった。いまは印刷屋も厳しい。出版も減って、パソコンの普及と印刷通販も街のあちこちに支店を広げて、テレビでも宣伝している。従来の印刷屋スタイルではやってゆけない。ブログでもなんでもいまは、その運用するサイトで印刷製本して本にしてあげるとどこでもやっている。家庭で使うプリンターもよくなった。小部数なら自分たちでできるのだ。自費出版する人も減ったろう。出しても売れない。書店も潰れている。本を読む人が減ったので、活字離れではないが、みんなスマホで電子書籍を読んだりしていて、紙の本が苦戦しているのだ。そんな中、おふくろの本を百歳の記念に出してやるのは、身内に配るためのものだった。孫子親戚だけでも百人はいる。その人たちに百歳になったおふくろの川柳百句と、片側のページには幼いころの写真から、尋常小学校、娘時代、デパートガールの時代に見合い写真、婚礼写真と、満州時代の写真、それから現代までの写真をモノクロで50枚を貼り付ける。そういう本を作ってやるというと、本人ははりきっている。書くことに忙しく死んでいられないと、やる気を出してきていた。
 老人施設は面会も10分よりできず、外にも出られないで閉じ込められ、暇を持て余していた。ちょうどいい暇つぶしができたと喜んでいた。それはわたしも同じで、今年の夏までに出してやりたいと、いま、青森の妹から送ってきたノート2冊から、選句しているところ。来週からパソコンで打ち始めよう。それもこれもコロナがなかったら、できなかったことだ。コロナよありがとう。

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