コロナノコロ

コロナ生活から思うこと

古本屋の怪談

ホラーものが好きなくせに幽霊は信じない。超常現象も科学的に解明するEテレの番組が面白くていつも見ていたのが、NHKも批判が来たか、番組を終えてしまった。あれはいい企画であったのに。子供のときから怖いものが好きで、テレビ番組では、「世にも不思議な物語」とか、「ヒッチコック劇場」「オーソンウエルズ劇場」などの外国のドラマばかり好んで見ていた。最近ではタモリの「奇妙な物語」もたまにやれば見ているし、youtubeで昔のその番組を探して見ている。空飛ぶ円盤も好きで見ているが、宇宙人はいるかどうかということについては、それはわれわれなのだと答える。海外に旅行して、「あっ、人間だ」というのと同じだ。広い宇宙の中にはきっと異星人はいる。だけど遠すぎて来られないのだ。ワープなどの時空を超えた移動手段がなければ、とても離れた地球に来ることができない。だから、架空の話ではなく、実際に存在するのだ。
 幽霊はどうか。あの世があるのかということは信じない。もし、この目で幽霊を見て、あの世があるということが判れば、きっと嬉しくて万歳するかもしれない。来世があれば死ぬのは怖くなくなる。


 これから書くのは、わたしの体験ではなく、身内などが体験した幽霊の話だ。
 いまから20年くらい前のことになる。そのころ、わたしは青森市内あちこちに古本屋の支店を出して広げていた。そのうちのひとつの店が不思議なことが起こる店であった。青森市の東の藤田組通りという車の通行量の多い通りがある。その路面店で貸店舗があった。二階建てで、一階と二階がそれぞれ30坪ある広い店で、店の前には車が5台は停められる駐車スペースもあった。前にビデオレンタルの店舗であった。そこがやめてしばらく空いていた。家賃は安くはなかったが、古本の在庫がオーバーしたので、どこかに店を借りないと、後二つの古本屋はパンクしてしまいそうだった。思い切って広い店を借りようと、一階は古本専門で、二階は中古レコードとCD、玩具やトレカなどを置いて、簡単な喫茶もしようと、自販機から椅子テーブルも置いて、ゲームの中古なども置いた。
 その開店の日だった。チラシも周辺に撒いたので、かなりのお客さんが来てくれた。名前はブックマニアという店名にした。白い本棚も50本くらい新たに購入し、看板からカウンターなどで設備投資も多かった。ブックオフなど大型店がどんどんと進出してきたから、わたしも負けてはいられないと勝負に出たのだ。
 その開店前に、粗品を手に近所に挨拶に回った。すると、向かいのコンビニの奥さんが、「あんたたち、どうして、向かいに店を出したのよ。向かいは、長くて半年、みんなすぐに開店してきやめているのよ」と、開店前にそんな不気味なことを言う。よく市場調査をしてから決めればよかった。
 しかし、もう遅い。乗りかけてしまった。それで、開店初日にもおかしなことがあった。夜に酔っぱらいではないが、頭がおかしいような男が店の外で叫んでいたのだ。「こんな店なんか潰してやる」そう怒鳴っていたので、何事かと思った。
 最初の船出から縁起が悪かった。その店は次第に売上が落ちて赤字転落、予定の収益がつかめずに客数も減り、苦戦することになる。
 わたしの前妻を一階に配置して、二階にはアルバイトを頼んで店番をさせていた。そのうち人件費も大変になり、二階の喫茶はやめて、100円均一の古本だけ並べて、無人にした。万引きされてもいい本ばかりを置いて、会計は下のカウンターでと店は一人だけにした。その代わり、なにがあっても無人では危ないからと、二階には防犯カメラを取り付けた。それは一階のレジカウンターでモニターで見られ、録画もできるやつを備えていた。
 あるとき、前妻が、わたしに電話をしてきて、おかしいことがあると、怯えたような声で言った。二階に客が上がっていないはずなのに、子供らが走り回る足音と声が聞こえると。見に行ったら、誰もいなかったという。それは隣の家から聞こえてきたのじゃないか。それとも空耳だよと、そう言ってやるが、それからはバイトが店番していたときも、防犯カメラにいないはずの黒いマントを来た男が本棚の陰に隠れるようにして立つているのが映ったと騒いだ。後で店に来たときに、録画を見たが、そんなのは映っていないのだ。バイト君は、確かに覗きこむような恰好でこっちを見ていたと証言する。また別の日には、前妻が、パソコンで古本のデータ入力をしていたら、外のガラス窓に階段から降りてくる男の姿が映り、はっと振り返ったら誰もいなかったという。夜は特に客の来ない店で、その夜も誰もいないはずの店にガラスに映る姿があったという。
 そういうおかしなことばかりが続いたので、売上も悪いし、このままでは続けられないと、店をやめることにした。本棚は新品同様だったが、弘前の古本屋仲間に格安で売ったら全部買ってくれた。二階の100円本はまとめてスーパー源氏に10万円と出した。1万冊の本が1冊10円で、中身はマンガ本に新書、文庫本、単行本といろいろだが、そんなに汚い本はない。それはすぐに注文が来た。宮崎の古本屋からだった。これから古本屋をやるのに在庫がないのでということで、運賃は相手もちということだったので、安いほうがいいと運送屋に見積もりをもらったら、10万円でトラック1台で走るというところが出てきた。青森から九州の宮崎まで、ダンボール箱にして100箱を運ばせて、二階の在庫はゼロになる。そうして、店をたたむ準備をしていたとき、バイトの男の子が、悲鳴を上げて二階から駆け下りてきた。どうした? 誰か二階にいる。出てゆくなーと男の声がしたと震えている。またか。何か呪われている店だ。たった7か月の商売だったが、設備投資も経費も損失が大きかった。
 たまたま、その近くにうちの親戚が昔住んでいた。その親戚の叔父が、「なんであんなところに店を借りたのよ。あそこは昔、墓地であったところだ。隣のアパートを建てるときの工事では、かます一杯分の骨が出てきた、いわくつきの土地なんだ」
 それを先に言ってもらいたかった。もう撤退するときに叔父から聴いた話だ。
 いまはその古本屋で借りた建物は取り壊されて、その跡に新しいアパートが建っているが、そこの住人には何もないものか。大丈夫なんだろうな。


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