コロナノコロ

コロナ生活から思うこと

鴨長明さんが現代に蘇る

 鴨長明さんは、京の都が地震や火事、疫病などの天変地異がひどくなり、荒れ果ててきたので、郊外の山科の山の中へと引っ越した。大八車に当時はきっと画期的な、プレハブ小屋の資材を積んで、都から逃れて住もうと、人のあまりいない静かなところへと、移住する。そして、自然の中で、ウイルスもないし、火災もない、強盗から犯罪もない田舎の恰好の地を見つけて、そこで運んだ建材を組み立てた。それは小さな庵で、組み立て式の日本初のプレハブ小屋なのだ。しかもバラしていつでも移動させられるというもの。大きさは間口は一間より大きかったという。それが方丈の間で、そこで書いたものが『方丈記』になる。方丈の丈とは約3メートルというから、9平方メートル以内、約3坪もないから、四畳半よりは広く五畳少しの広さではなかったか。
 現代では、それがテントでソロキャンプになり、キャンピングカーでもある。移動式のバンガローでもある。
 先日、スマホのネットを見ていたら、スロヴェニアで製造されたというコンパクトなエコロジーなハウスが紹介されていた。一人用だが、二人でも暮らせる、電気ガス水道のいらない、卵型のスプセルだった。それは自動車で牽引できるから、どこへでも移動して設置が可能で、山の上や島などにはヘリコプターで運搬ができるという。キャンピングカーみたいなものだが、いままでとは違うのが、気密性もあるが、ソーラーパネルで太陽エネルギーを供給し、さらに風力発電の装置を屋根に設置してあり、室内のエアコンと冷蔵庫、洗濯機、テレビなどの家電はすべて賄えるというもの。屋根には雨水をろ過して、飲用水にする装置まで取り付けられている。どんなところでもそのカプセルハウスでは光熱費がかからず、エコな生活を送ることができる。トイレの汚物処理までやれるようになっている。内装は白が基調で、窓は開閉できるし、寝室の二人が楽々寝られるベッドにはおしゃれな丸窓がついている。そこなら熊が襲ってきても安全だし、暴漢に襲われても平気だ。水害に遭っても船のように浮く、ノアの方舟にもなる。ただ、価格は高く、1千万円というから、それが量産されて、安くなれば、災害時の仮設住宅としても大変重宝にはなるだろう。個人的には、そういうのが安く売られたら買いたいとは思う。定住はしたくないが、トレーラーハウスのような、移動できる家なら欲しい。ジプシーのように、ひとつところに住まないで、移動する旅のような生き方に憧れる。


 日本ではどこで何が起こるか、災害は安全な場所というのがない。住んでいるところが水害で流されるかもしれないし、土砂崩れでいつ押しつぶされるかもしれない。地震の液状化現象であったり、マンションも傾いたり、住めなくなる恐れもある。津波も想定外の高さで内陸まで押し寄せてきたら、防波堤があっても乗り越えて、内陸2キロも離れているからと安心はできない。住宅密集地では神戸のように火災でぺろりと燃える。一生安心して住める土地などないに等しい。それなら、いっそ移動できるキャンピングカーにしたいところだ。
 うちの次男は、柏市にマンションを購入して暮らしていたのが15年くらい前だった。それが3,11の大震災のときに、柏市が放射能のスポットになり、学校では子供たちを外に出さずに窓は締め切り、役所では毎日の線量を広報で流していた。それで二人の娘がまだ小さかったが、そこには住めないと、買って何年も住まなかったのに売って、いまは豊洲の賃貸マンションに引っ越して住んでいる。もう買わないだろう。賃貸でいい。何かあれば引っ越したらいいから。そのことで凝りを見た。永住しようとして選んだ街が、いつどうなるか判らない。


 わたしも老後にいつまでも賃貸は貸してくれないだろう。老人でもいいというところもあるかもしれないが、断られるほうが多い。老人の住むところがそのうちなくなる。それで将来は安いホテル住まいも考えている。海外ならとても安く暮らせる。日本でもビジネスホテルで地方なら、探せばいくらでも安い部屋がある。それか、月々4万円で全国のシェアハウスを泊まり歩ける定額住み放題のアドレスに参加しようか。いずれにしてもこれからの老後は移動して歩くよりないのだ。いまは69歳だが、今年の6月から70歳になる。その前に借りておこうと、来週は平塚市に行ってくる。60代と70代ではきっと見方が違うのと、働いているうちに賃貸マンションを契約しておいたほうがいい。無職の老人には誰も貸さないだろうから。
 これは鴨長明さんでなくても、これからの老人たちには深刻な住まいの問題なのだ。


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