コロナノコロ

コロナ生活から思うこと

廃墟探訪

 スマホのyoutubeを見ていると、廃墟探訪というマニアの方がビデオ撮影した動画を上げていて、結構見ている。最近は、そういうツアーも出てきているほど、廃墟ファンという人たちが存在するのだ。わたしもきっとそのうちの一人だろう。温泉街の潰れた旅館だとか、閉鎖して何十年も経った遊園地だとか、そういうかつての栄華の跡を見て歩くのが好きなのは、どういう精神状態なのだろうか。
 考えてみたら、歴史的建造物の多くはそれで、世界遺産になっているものもあるが、ひとつ間違えば、それはただの廃墟なのだ。富岡製糸工場もそうだし、長崎の軍艦島もそうだ。そこはいまだにツアーで訪問する人たちがいる。わたしも行きたいとは思った。それが世間で騒がれる前に、いまから35年くらい前だったか、週刊誌で取り上げられたり、コマーシャルでもやっていた。わたしが札幌で暮らしていたときで、息子たちはまだ3歳とかだつた。テレビで軍艦島が出て、「島は死んだ」とやっていたのを、子供たちは、「ちまはちんだ」といつも真似して言っていたので覚えている。
 そのネットでたまに見ている廃墟探訪は、温泉街をカメラで追う。わたしもよく行った温泉街が出てくる。ひどいことになっている。栃木県の川治温泉も鬼怒川温泉も、潰れた旅館やホテルが崩れかけ放置されているところをカメラで紹介する。中には危険なので入れないし、入れば管理しているところがあるから不法侵入になる。一年前に一人、鬼怒川温泉に泊まりに行ったが、やはり閉鎖しているホテルの建物はいくつもあった。そのときは、別に気にはしなかったが、実はコロナの前からそうなのだ。温泉場では、すでに古い耐用年数の過ぎたホテルがリニューアルできないで、廃墟になっていた。
 去年は温泉場にあちこち出かけたが、そういえば、伊豆の熱川温泉も伊東温泉もそうだった。一軒二軒というものではなかった。軒並みずらりと廃墟で、ロープを張っているところはそうか思うが、普通のホテルでも玄関が暗く、電気が点いていないと、閉めているのかと思う。それで建物を眺めたら、鉄部分は錆びているし、ガラス窓も割れている。外壁にはひび割れ。営業しているのなら、そういう表から見える穴だとか割れた窓など不格好で、そのままにしては客は来ない。それに似た状態で、営業しているホテルもあった。外装はもうすっかりと汚れて、これでは宿泊料金を払ってまで泊まりたいとは思わない。それでも修繕する予算がないのだろう。わたしは、全国チェーンのそうしたホテルに安く泊まり歩いた。都心からバスで無料送迎してくれるし、一泊二食付きで一人でも6千円くらいと安い。しかも、現地ではマイクロバスで観光地まで往復連れて行ってくれるサービスもあるというから申し込んだ。鬼怒川もそれで、グループで経営している大きなホテルだが、もう中身は終わっている。寒々としていた。売店で土産を買えば、500円引きにする割引券もくれたので、誰も買っていないので、それならと買ってみた。漬物などのおかずが多かった。お菓子はいらない。職場のみんなにお土産もいると、買ったが、賞味期限を見るのも忘れない。いつのものか判らない。よくよく見たら中国製で、この土地のものではない。中国人の観光客がコロナでなければこぞって来て、土産を本国に持って帰ったら、中国製であったという、昔はハワイから土産と買って帰ったら、メイドインジャパンであったという笑い話に似た話もあるくらいだ。
 部屋はぼろぼろ。直せないのだ。自分のマンションの部屋のほうが綺麗かもしれない。それとバイキングの食事も、冷凍食品に佃煮など、手を加えていないものばかりがずらりと並ぶ。
 それは前にもあって、安いプランで家族で泊まった塩原温泉の大きなホテルであったが、夕食の膳に載ったのが、そういうおかずばかりで、恥ずかしかった。子供たちは別に何も思わず喜んでいたが、何か貧乏くさくてせっかくの旅行が情けなくなった。
 伊豆に行ったときも、プール付きの大きなホテルだが、プールで泳ごうと支度はしてきたが、誰も泳いでいないどころか、プールの水は濁って汚く、もうしばらく誰も使っていないようなのだ。フロントも廊下もエレベーターも古く、何か陰気くさい。昔はよかっただろうなと思う、いまは廃墟寸前のホテルで、安く泊まれたので、文句はないが、なにかみじめな思いをした。わたし一人だから、そういうホテルでもただ寝るだけと割り切っていたが、相方も一緒なら怒るだろうと思わせた。


 温泉場も新しいホテルも建つが、古いホテルはひどい状態だ。鉄筋のビルだから、古くなれば見られない。それが、伊東温泉では百年以上経っている旅館に泊まったが、そこはよかった。和風旅館は古くなればなるほど味が出る。江戸時代の建物の那須の北温泉の旅館にも泊まったが、昔の湯治場そのままで、映画の「テルマエ・ロマエ」のロケ地にもなった旅館だ。床も黒光りして部屋は少し傾いていたが、なににつけても歴史を感じさせてよかった。できれば、ビルの古いホテルに泊まるよりは、木造の旅館で古いところに泊まりたい。
 現代のものは経年で廃墟になるが、和風のものは逆に味が出るから、神社仏閣と同じで、劣化を感じさせないのだ。洋風でも海外は同じく古くても味があるから、ビルでも何百年ももつものを建てたらいいのだ。
 遊園地の廃墟もあちこちで見た。これからはコロナが過ぎたら、きっと日本全国廃墟だらけになるのだろう。淘汰されて、生き残れなかった店やホテル、遊園地、施設が全滅の商店街のシャツター通りもそうだが、各地にゴーストタウンが出現するに違いない。
 

×

非ログインユーザーとして返信する