コロナノコロ

コロナ生活から思うこと

歩く人 最寄り品を買い回る

 最寄り品と買い回り品というのがある。食品や家庭日用品などは最寄り品で、わざわざ遠くのスーパーが安いからと電車賃と時間をかけて買い物に行くものではない。1円2円安いからと、交通費のほうが高くつくから、その辺で済ませておくものだ。買い回り品というのは高額なものもあるが、あちこちの専門店に行って、値段を見比べて、検討する。その辺で適当に決められないものは家電や袋物、靴や衣服なんかもそうだろう。気に入ったもので納得するまで店回りをしてから決める。
 わたしの場合は、同じものなら安いに越したことはないが、別に時間はいくらでもあるし、1円2円のところではどうでもいいのだ。買い物の楽しみもないし、ただの時間潰しで、歩く運動なのだ。
 ご近所を歩くのだが、できるだけ、歩いたことのない道を歩いて、買い物したことのないエリアまで遠足してみる。スマホの万歩計を見るのが楽しみなだけなのだ。
 それで、その日、休みだったが、隣駅の検見川浜まで行ってみる。千葉市美浜区という隣の区なのだが、前に自転車ではしょっちゅう通っていた。歩いてゆくのが初めてだ。最近は、自転車には乗っていなかった。錆びているかと心配になるほど、歩いている。この辺りの駅前はイオンがほとんどへばりついている。そのショッピングセンターは大きいが、あちこちあるのでわたしはあまり見ない。どこでも中身は同じかと思うからだ。
 途中に公園があった。人工池のある検見川浜漁場記念碑があるというが、どこにあるのか。天気はいいが寒い。ここのところは寒気で、公園のベンチで少しだけ休んだが、本を読むとか、そういうことはできない。それで、読書も兼ねての外出をどこでするかと、ショッピングエリアのビルの一階にサイゼリアがあったので、昼過ぎに店内が半分以上空いているのを確認して入る。あまり混んでいたりすれば、ドリンクバーだけで長居するのも申し訳ない。
 このサイゼリアは関東で初めて知ったのだが、青森には支店はなかった。イタリアンレストランで、どこにでもある。初め入ったときは驚いた。その安さだ。ピザやパスタは400円以下で食べられるとは。それで若い人たちだけでなく、高齢者も随分と利用していて、いつも混んでいるのだが、コロナでやはりここも閑散としている。サイゼの社長が最近のニュースで「ふざけるな」と激怒したのは、大臣が夜だけでなく昼も飲食店利用を自粛してと国民に呼びかけたからだ。いまでも赤字で大変だろうに、閉めろ、やめろということかと、それは怒る。そのニュースで多くの人が同情して、サイゼに行こうと利用を促した。わたしもそう言いたい一人だ。
 一昨年まで勤めていて南青山のマンションにサイゼのグループ会社の会長が住んでいた。わたしがマンションのフロントに夜中座っていて、コンシェルジュみたいなことをしていたら、酔って帰ってきた会長が、「もう慣れましたか? 頑張ってくださいね」と、声を掛けてくれる。わたしごときの名前も覚えてくれていた。それからはサイゼのファンになって、ランチはそこで食べる。
 ドリンクバーだけなら悪いので、ジェラートも頼んだ。それでもその二つで450円だ。カプチーノや野菜ジュースもお替りして、本を二冊読んでしまう。
 そこから隣のイオンに入ってみる。食品で何か変わったものがないか、それか下着など冬物処分セールで安くなっていないかと、売り場を見る。ついで、また読書タイムの続きで、売り場の端にある椅子に座って読む。老人ばかりが座っている。その椅子の背に、30分以上の居座りはお声掛けさせていただきますと、書かれていた。年寄りたちが占領しているので店側としては、ずっと買い物もしないで一日居座られたら困る。それは判るが、老人の居場所すらなくするというのはどうか。ホームレスではなく、単に居場所なのに、反感しかなかった。さっさと出てくる。


 それから別の日は、行ったことのない街の散策だと、仕事帰りに地下鉄東西線で途中下車。それでも家には乗り換えで帰れる。
 行徳駅で降りる。前に千葉県のテレビで空中散歩といういつも同じ飛行機から撮ったわが街を放映する番組で、市川市の行徳の上空を撮影していた。そこに奇妙なメガネのような緑地があった。池の中に二つの目があるような広い湿地帯は何なのか。グーグルマップで見たら、それは宮内庁管轄の新浜鴨場という外国から客人が来たときに陛下がお連れする野鳥の保護区みたいなところらしい。そこまで歩いた。ところが、柵が巡らせてあり、立ち入り禁止で中が見えない。ゴミの不法投棄が多い。それで警察署が看板を出していた。こんなところに国賓を連れてくるのか。
 見ることができないので、がっかりとして、また駅へと戻る。どこかで昼飯だと、探したらやよい軒という入ったことのないチェーン店があった。そこも安いが、どうもありきたりの街の洋食屋というメニューだ。それでも混んでいるのはうまいのだろうか。またしてもカツ丼を頼む。わたしも好きで、永井荷風も死ぬ昼までカツ丼をこの市川市の本八幡駅前の行きつけの食堂で食べて亡くなったというが、わたしもどうもカツ丼には目がない。隣の女性と後ろの女性はOLなのか、休み時間いっぱいそこで時間潰しなのだろうか、ゆっくりと食べていて、わたしより先に来ていて食べていたが、こっちが帰るときもまた食べていた。どうでもいいことだが。
 駅前にはスーパーが2軒あった。こんなところまで来て、また食料の買い出しだ。そんなに変わったものなど売ってはいないだろうに。見たことのない、食べたことのないものを探している。輸入食品の板チョコやケーキの箱詰めなんかも安いと買う。おやつばかりではないのか。冷蔵庫の上はもう載りきらないで崩れて落ちてくるというのに、それでもまだ買うあさましさ。
 仕事明けで眠くて疲れているのに、それから街ぶらをして、帰りにジムに寄ってトレーニングまでしてから帰る。それが日課のようになっている。


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