コロナノコロ

コロナ生活から思うこと

歩く人 表参道から東京駅へ

 土曜日の仕事明け。交代の仲間と業務の引継ぎをする。「今日は、どこに行くんだい」と、いつも寄り道して行くので仲間が聴く。「そうさな、今日は青山通りを歩いて虎ノ門から日比谷公園、東京駅まで歩いて、そこから電車で帰ろうかな。帰ったら駅前のジムで運動もして」すると、仲間は驚いて、「パワーあるなあ。仕事もそれぐらいやってくれたら」とイヤミを言うから、「やっているでしょう。スマホの万歩計では、昨日も15000歩の12キロ歩いているんだ。サボッているわけじゃない」と、こっちには証拠がある。
 職場の学校では、共通テストが今日から始まり、入口が厳戒態勢。受験生たちが次々と入ってくるのをチェックしている。センター試験の代わりに今年からまた似たようなやり方だが、どこが違うの?
 青山通りを歩く。土曜なのでがらがら。コンビニで切手とドリンクを買う。おふくろに手紙を出すにいつもポストを探すが、都心部はいくらでもある。昔のままどこにでもあったので助かる。外苑前を過ぎる。公孫樹並木が名物だが、何年か前に見に来たな。地下鉄でいつも動くので、点でどこにでも出没したが、線で歩いたことがない。赤坂御所が左手に広がる。途中にカナダ大使館がある。見たらハーバート・ノーマンの図書館もある。蔵書を公開しているのか、著作か、いずれにしても一度来てみたい。ノーマンはカナダ大使を戦後に勤めて、レッドパージで聴聞を受け、カイロのビルから飛び降り自殺したとされている。日本で父親と共に宣教師で長く住み、戦後は安藤昌益の研究者になり、岩波新書で『忘れられた思想家』として戦後初めて世に問うた。そのノーマンの著作集はすべて若いときに読んで、ミステリアスな死に触れた。それを書いた小説が中薗英助の『オリンポスの柱の蔭に』で、謎を解き明かすように書かれている。
 そんなこを思い出した。その隣の公園が高橋是清の屋敷跡を記念公園にしたところ。車では前を走ったりしたが、気が付かない。やはり歩いてみないと判らない。そこでひと休みで喉を潤す。園内には淑容沈氏墓碑石跡という案内板があった。李朝の16世紀の後宮の墓が当時からこんな日本にあったことが何かロマンを感じさせた。いまだにその真相は判らないという。韓国に石碑は返還されたが、向こうでも探していたらしい。500年も昔のことだから、歴史ミステリーだ。
 そんなことも歩かないと見えない。青山通りの突き当りに赤坂見附が見える。目印がホテルニューオータニの建物だ。そこから虎ノ門の方へと横道に迷い込む。と、ビルの合間に武家屋敷の門だけが重要文化財として保存されている。戦災でも焼け残ったのだろうか。門だけがあるというのもすごい。そこだけが江戸なのだ。
 六本木ヒルズの建物が左手に見えるから、それで方角を知る。赤坂の繁華街に入っていた。そこは毎度千代田区で暮らしていたときは歩いても買い物にきた。三番町の周辺には店がなく、まとまった買い物があれば渋谷に出るか赤坂まで歩いた。日枝神社が見えている。いつも前を通っても、石段が長いので、面倒だとお参りしたことがない。見たら、いままで気がつかなかったが、エスカレーターがあるではないか。エスカレーターのある神社というのも珍しい。それで初めて上の境内まで行ってみた。この日は16日でどんと焼きも片づけていたが、初詣の参拝客がいまだ少し並んでいた。分散せよというのがきいているか。下から見たら大きな神社と思っていたが、上に来たらそんなでもない。
 また降りて溜池山王から虎ノ門の方向へと歩く。また判らなくなり、警官に道を聴いた。若いおまわりさんで、虎ノ門ヒルズはどの建物ですかと、もう見えるはずなのに、そのおまわりさんは、どこの田舎から出てきたのか、ヒルズとは何かも判らない様子でわたしが説明したら謝っていた。
 この辺りは道が入り組んでいるから迷う。アメリカ大使館に出たら、警備がすごい。機動隊の車がずらりと並ぶ。虎の門病院はここにあるのかと初めて見る。このエリアには用がないので来たことがない。議員会館と首相官邸も通ってきた。虎ノ門ヒルズの周辺は開発でこれからも高層ビルがどんどん建つのか、工事中ですごいことになっている。ヒルズができて初めて入る。土曜ということもあるが、テレワークで通勤を減らしたか、店はがらんと客もいない。何か食べようかと、昼時なので、メニューを覗くが、しゃれたものには違いないが食指が動かない。それで、次のビルと別の建物の地下の飲食店を覗いたが、閉めている。これでは商売にならない。
 腹も減ったが、どこかないかともう日比谷公園に来ていた。日比谷図書文化館があった。そこには何度か来ている。入ったら上はいまは閉鎖しているとか。図書室が使えない。常設展は何度も見ていた。企画展は来週からだが、小村雪岱展をやるというので、割引券だけいただいて、また来てみよう。そこのカフェが気に入っていた。円形の窓際と自由に手にとれる新刊図書が並べてある。ツタヤみたいな雰囲気だ。ところが、そこも満席。コーヒーも飲めないでがっかり。
 そうだ、松本楼があったはずだと、行ってみたらそこも混んでいる。他が閉めているから開いている店が混む。残念と、噴水の前のベンチで持参した本を読んでいたら、ぽかぽか陽気でついうとうと。この日は気温は19度と天気予報でやっていた。日比谷公園はいつ来てもいいところだ。親子連れが隣のベンチで何か食べている。親子の会話がほほえましい。そんなときもあったなと、遠い日を思う。
 皇居のほとりを歩いて、丸の内を歩き、丸ビルに入った。上のレストラン街がいいなと、上ったが、ランチで2千円はどうも勇気がいる。我慢することにした。それでゴールの東京駅から電車で千葉まで帰ることにした。疲れた。それでも稲毛に着いたら、駅前のジムに寄る。根性だ。仕事も早朝からして、ウォーキングもしてからジムで鍛えるとは。昼飯をスーパーで買って帰る。万歩計は2万歩の16キロ、消費カロリーは760kcal、脂肪燃焼量は108gと出ていた。
 

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