コロナノコロ

コロナ生活から思うこと

缶詰生活

 味覚嗜好は変わってゆく。子供のときと大人では違うし、あんなに好きであったものが、高齢になってくるとどうも口から余すことになるとは。
 そのひとつにコンビーフがあった。普段は缶詰でも高いので買わないが、たまたま輸入ものが安く売られていたので、買い求めた。あまり缶詰やビン詰は買わなかったのが、コロナになり、家にいるようにと宣言された昨年の春から、スーパーで保存食として缶詰は買うようになり、買いすぎて、いまも台所のシンクの下にいっぱい入っている。鯖缶は体にいいというので、安かったら買っておいた。その料理法もテレビでいろいろとやられて参考にはなった。鯖カレーまだしていないが、魚のカレーはどうなのか。サラダにはツナ缶は必ず入れる。できるだけ魚は摂るようにはしているが、生があればそれに限る。ただ、わたしのように一人者は、魚の切り身も三枚五枚は多いから、毎日同じ魚ばかり食べないといけなくなるので、最近は生は買わず、缶詰ばかりで栄養を摂ろうとしている。サンマのかば焼きも美味しい。鮭の軟骨の水煮も体にはよさそうだ。缶詰なら一人分で余さないし、一品が欲しいときに、そのままでもいいが、大根おろしや野菜などと、ちょっと手を加えて美味しくしても使える。
 コンビーフ缶は相方は知らなかった。食べたことも買ったこともないという。第一缶詰なんか無縁のお嬢様育ちなので、魚と肉は一番いい店で買っていた。非常食としての缶詰も知らないのは、災害に遭遇したことがないからだ。いまが、コロナで災害みたいなもので、それで買ってきて、一度食べさせた。わたしは、そのまま薄く切って、食べるのが好きなのだが、チーズとクラッカーで挟んで食べたりもする。冷凍のポテトの皮つきをカットしたものを買ってきて、それを揚げたら、コンビーフと混ぜて少しの塩故障で味を調える。あるいは、じゃがいもを薄切りにして、コンビーフと炒めてハッシュドビーフにする。サラダに入れたり、カナッペにしたりと、食べ方はいろいろ。いま、それを食べても若いときのように美味しいとは思わなくなる。味覚が年とともに変わったのだ。
 ニューコンビーフという缶の図柄に牛の絵がないものは、牛肉だけでなく、いろいろと混ざっている。中身が書いているから、その表示を確かめる。普通のコンビーフは100gで400円近くするが、ニユーがついたらその半分近くで売っている。馬肉が多い。他に何の肉が入っているものか。だけど国産はまだ信用がおけるが、輸入ものが怪しい。
 海外に行ったときは、よく、成分の判らない怪しいソーセージとか肉の缶詰などの加工食品ばかりをスーパーで買っては安宿に持ち帰って料理に使った。値段は日本よりずっと安くて、100g辺り10円とか20円とかそういう値段なので、気持ちが悪い。表示が読めないから、なんとなく不気味だが、食べられる。中には美味しいものもあり、知らないで食べるのが却ってよかったりする。


 フルーツも高いときは、わたしはよくフルーツ缶は買う。それも珍しいものがあれば買った。先日は梨の缶詰を見つけた。食べたら和梨だが、百円もしないのだ。味はちゃんとしていた。ケーキを作るときもフルーツ缶は使える。ミックスのものがいい。チェリーも入っていて、飾りに使える。果実も最近は高くなってきた。正月は仕方なくみかんは買ったが、箱で買えば安いのだろうが、一人では腐らせる。なんでも一人分は高くつく。それだから缶詰で我慢している。
 アスパラガスの水煮も好きなのだが、瓶詰は結構高い。それが先日行ったスーパーで、屑ではないが、カットされた折れたものばかりが缶詰になったのが100円少しで売られていた。グラム数も見る。それも固形物の重さ表示で。それでも安いと買って、サラダにしマヨネーズで食べる。
 コロナで缶詰がいままでは隅の棚にそっと置かれていて見向きもされなかったのが、一躍主役抜擢されて、いまはどこのスーパーでも堂々と山積みしている。缶詰会社も驚いて、例年の何倍かの生産量になったと嬉しい悲鳴を上げていた。
 青森市にはイタリア館という珍しい戦前の洋館が油川の方の海辺に建っている。大正6年ころというから、早いうちにイタリア人のファブリーがそこでイワシの缶詰工場にしたところだ。八戸でも缶詰は造られたが、それまで缶詰というものを知らず、干物で保存していた日本人が魚の加工食品を缶詰で食べるようになる。ファブリーの評伝は青森の北の街社から前に出版された本で読んだ。だいぶ苦労されたようだ。そこはいまも住まいになっているかどうか。わたしの幼少のときに近所にいた仲良しの看板屋の娘さんが嫁いで、そこを住宅にしていたので会いに行ったことがある。
 これからも震災と台風、水害と何が起こるか判らない。保存食としての缶詰は備蓄しておきたい。

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