コロナノコロ

コロナ生活から思うこと

歩く人 ふなばし三番瀬へ

 自然と文明の共存をテーマに書くソローのエッセイを久しぶりに読んだ。「ウォーキング」というエッセイで、こんなことを書いている。「私は、一日に少なくとも四時間ーいっさいの俗事から完全に解放され、森を通り抜けたり、丘や野原を越えたりして、あてどもなく散策するようにしていないと、自分の健康や生気を保つことができないような気がする。-たった一日自室に閉じ籠もっているだけでも、からだが錆びついてしまいかねない人間なのでー私の言う散歩とは、病人がきめられた時刻に薬を服用するような具合に、いわゆる運動することー散歩自体がその日の事業であり、冒険なのだ。-(ワーズワースの)使用人に旅人が、書斎を見せてくれというと、使用人が、これが旦那様の図書室です。でも、書斎は戸外にあると答えたー」というような文に突き当り、自分にもあてはまるなと、興味深く読んでいた。


 老人になると足から衰えてゆく。筋肉を使わないと老化が進む。一番いいのが歩くことだとテレビの最近の老人の健康番組は見ている。自分の住む周辺、千葉でも広いから、ネットで調べたら、行ったことのない公園などもいっぱいある。それをわざわざ電車で二つ三つと行くよりは、仕事明けに途中下車して散歩というウォーキングをしようと、最近はスマホのアプリの万歩計を見るのが楽しみになる。目標数値を入力すると、残りが判る。消費カロリーも出る。キロ数から、東京を出発して、累計でいまは浜松まで歩いていると、東海道での具体的な町が出るから、どれぐらい歩いたか見えてくる。
 松の内とは、関東と関西は違うらしい。関西は15日までで、関東は鏡開きの11日までとうところと、青森は7日までではなかったか。青森では、正月飾りやお札を神社で燃やすどんと祭は7日ぐらいにする。こちらに来てから、行事も感覚が狂う。昨日から三連休になる10日はまだ松の内で、神社から破魔矢を買って帰る人たちを見た。初詣も分散してくれというから、松の内にと、出かける家族も多いのだろう。
 どこに行くかと、前から歩いて見たかったのが、船橋市の海にある三番瀬という潮干狩りで有名なところだ。どこの駅で降りたらいいと、調べたら、京葉線の二俣新町駅とある。総武線でなく京葉線でもわが家に帰れる。東京駅から京葉線に乗ると、がらんと電車は空いているし、人もホームで待っていないのが異様だった。日曜で、ディズニーランドやシーに行く若い人や家族連れでいつもはぞろぞろと歩いているコンコースも、誰も歩いていない。ネットで臨時休園にしたのかと調べたら、どっちもやっている。きっと緊急事態宣言が出されてから、みんな自粛して出ないようにしているのだろう。
 二俣新町駅は何もないところだった。駅前にコンビニが一店だけ。そこでドリンクだけ買ってゆく。歩いて海までと遠い。周囲は物流倉庫ばかりで、日曜で人も車も通らない。四方を見ても、車と人影が見えないくらい、誰もいないのだ。一人だけジョギングして走ってきた若者と出会ったくらいだ。グーグルマップで見たら、30分も歩かないで海に至るようだ。暑くなってきたので、防寒着の前を開ける。汗も出てくる。風か冷たいが、歩くことでほかほかだ。ようやく海辺に至る。そこには広い駐車場に車が止まり、バーベキューの道具を出している夫婦もいた。てっきり、わたしは誰もいない静かな正月の海を想像していた。寂しい海に一人立って潮風に吹かれる光景を思って来たのに、結構な人が来ている。遠浅で、海の中に澪標のような棒がいっぱい立てられている。あれは、海苔の養殖だろうか。この辺りは海苔の生産地とテレビで見た。それと千葉県の最近の出荷が多いホンビノスという貝が波打ち際に見えて、拾えるのだ。アサリが大量に打ち上げられていたのは去年の暮れだったか。地震の前触れではないのかと騒がれた。ホンビノスはハマグリに似ている大きな貝で、安い。わたしも何度か食べたが、味もそれらしい。ひな祭りではハマグリのお吸い物をいただく習慣が関西にはあって、わたしもハマグリの代わりのホンビノスで食べたことがある。
 立て札に、いろいろ注意書きがしてある。潮干狩りでしてはいけないこと。大きさが2.6cm以下の小さな貝は採らないこと。網や熊手みたいなもので大量に採らないことと、素手で採ることが書かれていた。青森の蜆会をよく採った小川原湖や十三湖でも、フルイなどを持ってきてはいけないと書かれていたのを思い出した。売る目的でどっさりと採ると密漁になる。家族で楽しむぐらいならいいのだ。
 砂浜には風紋が波型に描かれ、水鳥がついばんでいる。三番瀬はふなはしの海浜公園になっていたのだ。トイレから学習館と子供たちの勉強の展示館とそのテラスと展望台からは海が眺望できる。運動公園もあって、野球場とテニスコートもあって、寒いのにテニスをしている。芝生では子供らが凧揚げもしていた。まだ正月なのだ。
 海はおだやかで雲ひとつない晴天。富士山がくっきりと見えている。これはいいところだ。松林も海辺の景色に緑を添えている。貝殻だけでなく、波打ち際を歩くと貝が顔を出している。採ってもいいのだが、面倒だから、そのままにした。高齢者たちが何人もデシカメのいいカメラに三脚を手に、撮影に来ていた。趣味のグループなのだろう。いまはじいさんばあさんたちの楽しみにカメラがある。
 テントを張って、寒いのにキャンプ気分で来ている人もいた。テラスでドリンクを飲んでしばし休憩。来てよかった。今年は元日からずっと海ばかり見てきた。小田原でも見たし、富士山は何回も見えた。正月は都心の空気も澄むので、富士山が見える確率が高い。
 帰りは南船橋のららぽーとの方へと歩こうかと思ったら、港ばかりで、そっちに通じる道がないので、元来た道を戻る。
 京葉線で稲毛海岸駅から家までは近い。途中のロイヤルホストに入って昼飯。日曜なのに、半分も埋まっていない。どこも大変だ。それから途中のスーパーで買い物してと、いつもの行動パターンだ。万歩計は2万歩で、16キロ、脂肪燃焼量は115gと出た。


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