コロナノコロ

コロナ生活から思うこと

おっさんレンタル

いま、ネットで話題になっているのが「おっさんレンタル」だ。登録されたおっさんと一時間相談したり、随行したり、話し相手になって千円の料金という。それは面白そうだ、アルバイトではなく、人助けにもなるかなと、おっさん募集を見たら、残念ながら68歳までと、年齢制限がある。いくらおっさんでも、じいさんはボケが入ったりするから、相手にならないときがある。父親の代わりになれる人を求めている。ただ、それも時給千円というのが気に入らない。ただの暇つぶしのバイトではないかと、そう思われても仕方がない。真剣に相手の身になって考えてくれる人もいるとは思うが、果たしてどうなのか。
 前に、代役募集というのもあった。結婚式で父親不在では恰好が悪いから、その日一日限りの花嫁の父を演じたり、祝辞を述べる人がいないので、ピンチヒッターになるとか、仲人をやるとか、すべて、一日のものでも料金がきっとすごいのだろう。それを前にテレビのドラマで見て、面白そうだ、わたしもしてみたいと思ったことがある。わたしは演技はヘタかもしれないが、成りすましぐらいはできそうだ。詐欺ではないのかと言われるが、よく、弁護士や警官などに成りすまして、詐欺集団の手先になるというものではない。善意の、困っている人のためになるということだ。
 人もレンタルできるのかと驚いたが、それは江戸時代からあった。子貸し屋という商売があった。犬猫もあったようだが、子供のいない寂しい家に、一日だけ、あるいは何日か、子供を貸すというもの。確か宇野浩二の小説に『子を貸し屋』というのがあった。ペットを貸す商売もあるくらいだから、何があっても驚かない。奥さんも貸すところがあるかもしれない。値段でピンキリ、一番安いのは、ぐうたらで、家事もしなければ、テレビばかり見てポテトチップばかり食べている女。一日借りたら、嫁さんはいらないなと思うに違いない。独身の人は、そうして一度は嫁さんレンタルもしてみて、夫婦生活とはどんなかと、疑似体験してみるのもいい。ひと月一緒に暮らしたら、やはり独身のほうがいいと、元に戻るかもしれない。


 おばあちゃんを借りることもいい。漬物の漬け方や、裁縫、昔の人の知恵を拝借する。孫の面倒を見てもらう。ベビーシッターよりはいいかもしれない。それか、おじいちゃんレンタル。大工仕事なら任せてくれと、日曜大工ではなく、DIY流行りの今日に、おじいちゃんというのは使える。電動工具は使えないが、カンナやノミ、ノコギリの使い方は昔の人は普通にできた。うちの祖父なんか、シロウトで大工ではなかったが、家一軒戦後に廃材や下北から材木を買って建てたのだ。俚諺に、「盗みっけと大工っけは誰にもある」というのが確かあった。晩年は、自分の畑に小屋を建てて、そこで悠々自適の生活を楽しんでいた。
 おっさんたちが使えるのは、人生経験が豊富だからだろうし、アドバイスができるくらいの職歴のある人もいるだろう。若い人たちが、友達に相談してもたいして解決策が得られないときに、おっさんたちは、それなりに、父親もやってきたし、子育てから資格取得、離婚経験、葬式からなにからといろいろと修羅場も潜り抜けてきて、そこから悩みを解決してくれるかもしれない。
 わたしも破産経験者で、いままで四人から破産の相談に乗ったが、それは弁護士の仕事で、口出しすることではないが、ケースバイケースで、自分なりにいい方向を見つけてやれたと思う。たいていの人はそこに至るまでの一歩が踏み出せないで躊躇しているのだ。
 コロナで誰にも相談できず、自殺してしまう人もいる。いのちの電話もいまは人手不足で、窓口は大変らしいが、すがるものがあるなら、それを利用するのもいいかと思う。ただ、変なのに引っかからないことだ。人の弱みにつけこむ悪いやつらもいる。まずは、役所の相談窓口が一番信頼がおけると思う。広報で、それぞれの相談日も決まっているようだから、予約してみるのもいい。

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