地下鉄や電車の乗り換えが歩かされる。それがいい運動になるのだが、駅によっては、階段を下りたり上ったり、エスカレーターで上下、外に出たりと、どこに連れて行くのだと案内板通りに進む。その距離1キロ近くあるときもある。乗り換え駅も地名が違う。地方から来たら、それで戸惑う。淡路町も小川町も一緒にするな。赤塚見附と永田町も長い乗り換え通路で結ばれて、嫌になるほど歩く。
　それが慣れてくると、どうしたら一番歩かなくていいかと頭で考えるようになる。まるで乗り換えゲームなのだ。最短距離と時間を見つけろ。
　先日は新宿に買い物に行ったとき、西武新宿線の駅から地下鉄都営新宿線の新宿駅という難問を前に立ち止まる。さて、どう行ったらいいのか。西武新宿線の始発の新宿駅は何故か仲間外れで、ひとつだけ離れている。歌舞伎町に近い東口から歩いて駅がある。そこは孤独な駅で、地下通路でJRなどと繋がっていない。連絡通路がないから外を歩く。地下鉄都営新宿線も端っこで、その反対側にある。端から端だ。わたしは最初は知らないで、バスタのある南口のほうまで行って、新宿駅をぐるりと回りこんで京王線の駅のほうへと出て、そこから都営新宿線の表示を見つけた。それがあったときは、まるで迷路で出口の看板を見たように、助かった、これで帰れるぞと喜んだ。よくよく考えたら、西武新宿線の駅から、大ガード下を潜って、西口に出たら、駅に沿って京王のほうに歩いたら近いのだ。それを迂回するかのように遠回りしていた。
　銀座に行ったときは、半蔵門までどうして帰ろうかというとき、わたしが銀座で働いていたときのように丸ノ内線の銀座駅から乗ると、四丁目の角からは数寄屋橋へと歩かないといけない。表示で400mとか500mとあれば、乗り換えでそれだけ歩く。年寄りたちは大変だ。足の悪い人、車椅子の人も大変で、都会で公共交通に乗るのは疲れる。
　そこで考える。銀座線なら下に降りたらすぐが改札口だ。よし、それに乗って青山一丁目まで行こう。そこから半蔵門線に乗り換える。それが一番乗り換えが短くていい。引き返してもそのほうが早く楽なのだ。引き返すという選択もあるのだ。乗り換え駅で大変なのは、大手町とか永田町、新宿と渋谷だ。いくつもの電車が交差していて、駅とホームが何層にもなり、渋谷なんか地下6階まで、東京駅はもっとか、下へ下へと潜らせる。エスカレーターでどんどんと地底に降りてゆく。ようやく着いたところが東横線で、移動距離が水平でも垂直でも大変なのは同じ。まだエスカレーターがある分、垂直のほうが楽か。
　乗り換えで大事なのは、その駅が複雑かどうかで、いくつもの地下鉄が入っている駅は線によっては歩く。それで歩かなくていい二つくらいの線が交差する駅を選ぶ。わたしは前に表参道駅まで通勤していたが、東京駅から丸ノ内線で赤坂見附で銀座線に乗り換えたが、そこは降りたホームの向かいが銀座線で渋谷方面だから、降りてすぐ乗れた。そういう二つの線が同じホームを共有しているところはありがたい。
　先日は頭にくることがあった。渋谷から東横線で横浜、そこから東海道線で平塚に帰っていたのが、渋谷駅で急行がなく、各駅停車ばかりで、これなら遅くなると、短気なわたしは中目黒駅で乗り換えた電車が武蔵小杉終点で、はっと気が付いたら、その駅からJRの湘南新宿ラインがあるはずだと、そのホームまで乗り換えた。が、遠い、遠い、歩いていて、もう二度と武蔵小杉では降りまいと息んだ。湘南ラインはまだ来ないで、京浜東北線が来たので飛び乗った。そうして横浜で降りた。ばかな、初めから渋谷から各駅で横浜に来ていたら、とっくに着いていたのに。あちこ乗り換えて逆に時間がかかった。自分の頭を叩く。そういうこともあるから、乗り換えでは時刻表も見ないといけない。ネットの乗り換え案内は便利で、最短時間と料金も出てくるから利用している。
　乗り換えて面白いのは、蔵前で、いったん外に出る。初めての人は大丈夫かと、改札を出たのに、切符が出てきたから、それを手に外を歩く。みんなぞろぞろと通勤客が歩いているから、その後ろをついてゆく。浅草線から大江戸線の駅まで270m外を歩く。それならちょっと見物に国技館でも見て行こうかと、寄り道はしていられない。切符は30分より外に出られない。ぐずぐすしていると使えなくなるようになっている。
　最近はようやく乗り換えに慣れたが、上京してきたときは、疲れた。都会人はよく歩くと感心したものだ。田舎の人のほうが歩かない。どこに行くにも車だからだ。車で近くのコンビニまで買いに行ったりと、歩かなくなる。青森県が肥満が多いのはそのせいか。
　いまは平塚に落ち着いて、これからは通勤もないし、乗り換えという煩わしいこともしばらくはない。何か用事がないと東京にも出ないだろう。田舎に引っ込むとはこういうことかと、通勤競歩からリタイヤしてゆっくりとした朝を迎えている。